高齢者のご自宅におけるトイレリフォームでは、介護保険・自治体・国の補助金を使えることがあります。
そこで今回は、費用を抑えてリフォームができる補助金制度の概要と、制度利用時の注意点を解説します。
トイレリフォームは、高齢者の方が自宅で快適かつ安全に暮らすために重要です。
トイレリフォームをご検討中の方はぜひチェックしてみてください。
高齢者の介護トイレリフォームに使える補助金と減税制度
まずは、高齢者のご自宅のトイレリフォームで使える補助金・減税制度として、以下を解説します。
- 介護保険の補助金制度
- 自治体の補助金制度
- 国の補助金制度
- リフォーム減税
それぞれに特徴や違いがあるので、しっかり理解していきましょう。
介護保険の補助金制度
トイレリフォームでは、介護保険の補助金制度が利用できます。
具体的にはトイレの改修や手すりの設置、段差の解消、滑りにくい床材への変更といったリフォームが可能です。
介護保険による補助金制度の概要は、次のとおりです。
補助金額 | リフォーム費用の1〜3割(上限20万円) |
利用条件 | 以下を両方満たすこと(1)介護保険の被保険者である(2)要介護1〜5、または要支援1〜2の認定を受けている |
利用回数 | 原則1回 |
補助金の支給額がリフォーム費用の何割になるかは、所得によって決まります。
詳しくはお住まいの自治体にご確認ください。
また、介護保険の補助金制度を利用できるのは原則1回までですが、以下の場合は再度利用が可能です。
- 要介護区分が3段階上昇した場合
- 引っ越しをした場合
介護保険の補助金制度は、高齢者が自宅で安心して生活を送れるようにするものとして、多くの人に利用されています。
自宅で長く快適に過ごせるよう、どのようなリフォームのために使うのかしっかり検討してみてください。
自治体の補助金制度
それぞれの自治体が提供している補助金制度も、高齢者のお宅のトイレリフォームで使えることがあります。
例えば広島県広島市では、「広島市高齢者等住宅改修費補助」という、バリアフリー化のための工事で使える補助金制度があります。
補助金制度は自治体によって違うため、詳しくはお住まいの自治体の公式ホームページなどをご確認ください。
自治体によっては専用のホームページや相談窓口が設置されており、一見難しそうな補助金の利用条件や申請手続きについて、わかりやすくまとめられていることもあります。
また、「住宅リフォーム推進協議会」のホームページでも、都道府県別の補助金制度を検索可能です。詳細ホームページや問い合わせ先も確認できるので、活用してみましょう。
国の補助金制度
国が提供している補助金制度の中にも、高齢者のご自宅のトイレリフォームで利用できるものがあります。
2025年の「子育てグリーン住宅支援事業」もその1つです。
この事業では、手すりの設置や段差解消といったバリアフリー改修も補助金の対象となります。
ただし、バリアフリー改修でこの事業の補助金を受けるには、開口部の断熱改修、躯体の断熱改修、エコ住宅設備の設置のうち、2つ以上を合わせて実施することが必要です。
他にも国の補助金制度の中にはバリアフリー改修を対象とするものがあります。
具体的な制度はタイミングによっても異なるため、リフォームを検討する段階で調べてみることがポイントです。
リフォーム減税
補助金制度ではありませんが、高齢者のご自宅でトイレリフォームをすると、リフォーム減税の対象となることがあります。
リフォーム減税が適用されれば所得税と固定資産税が減ることがあるため、結果的に出費を抑えることにつながるのです。
トイレリフォームだと、床面積の拡張工事や洋式トイレへの取り替え工事、洋式トイレの座高を高くする工事がリフォーム減税の対象となります。
ただし、確定申告をする必要があるなど他にも条件はあるので、事前にご確認ください。
高齢者におすすめの介護トイレリフォームと費用目安
補助金制度を活用してお得にトイレリフォームができることがわかったところで、高齢者のいる住まいではどのようなトイレリフォームがおすすめなのかを見ていきましょう。
費用の目安も紹介するので、補助金を有効活用するための参考にしてみてください。
手すりを設置する
高齢者の方におすすめのトイレリフォームの1つが、手すりの設置です。
手すりの設置にかかる費用は、5万〜10万円程度です。
トイレでは座ったり立ったりといった動作が必要ですが、高齢になり筋力が低下したり関節の可動域が狭くなったりすると、こうした動作が負担になる方も多くいます。
しかし、手すりをつければ、こうしたお悩みをお持ちの方でも自力でトイレを済ませやすくなります。
また、トイレに手すりをつければ転倒防止にも効果的です。
トイレの狭い空間で転倒すると、便座や手洗機で頭をぶつけるなどして予想以上に大きなケガをしてしまうおそれもあるので、手すりをつけて対策しておけば安心です。
ドアを引き戸にする
高齢者の方に合わせたトイレリフォームでは、ドアを引き戸にすることもおすすめです。
引き戸に変えるリフォームの費用は、10万〜20万円が相場です。
ドアを手前または奥に開いて入退室する開き戸は、開閉に合わせて自分自身も前後に動く必要があるため、歩行時にバランスをとりにくい方だと開け閉めしにくいことがあります。
特に車椅子の場合はトイレ前や中に十分なスペースがないと、ドアの開閉がしにくく不便です。
しかし、左右にスライドさせて開閉する引き戸なら前後移動は必要ないため、こうした問題を解決できます。
入り口の段差解消
トイレの入り口の段差解消も、高齢者の方におすすめのリフォームです。
段差解消のリフォームは、5万〜10万円程度の費用で可能です。
高齢になると足が上がりにくくなり、小さな段差につまづきやすくなります。
特にトイレは夜間に行くこともあり、足元が暗い中ではなおさらつまづくリスクがあります。
トイレの段差を解消する工事は、ドア枠や敷居を外して仕上げ材をほどこし、必要があればドアを交換すれば完了です。
和式トイレを洋式トイレにする
トイレが和式の場合は、洋式トイレにするリフォームもおすすめです。
洋式トイレへの変更は、5万〜40万円程度で可能です。
和式トイレではしゃがむ必要があり、足腰への負担が大きくなります。
バランスを崩して転倒するリスクがありますし、将来杖や車椅子を使うようになると和式トイレの利用は難しくなるでしょう。
また、費用はかかりますが、洋式トイレなら補高便座や暖房便座、トイレリフトの取り付けも可能で、安全性も快適性もアップします。
介護スペースを確保する
今後介護が必要になる場合は、介護スペースの確保もご検討ください。
介護スペースの確保にかかる費用は、10万〜50万円程度です。
トイレに介護スペースを作ると、介護者と一緒にトイレに入りやすくなり、安全かつスムーズなサポートが可能になります。
杖や車椅子を使う場合も、介護スペースがあると便器にスムーズに移動でき、トイレが使いやすくなります。
介護スペースを作る際には、トイレでの動きや動線を踏まえ、便器とドアの距離や手洗機の場所などを検討することがポイントです。
すべりにくい床に変える
トイレの床を滑りにくいものに変えるリフォームも、高齢者の方におすすめです。
例えば柔軟性のあるクッションフロアは、杖が滑りにくく足腰に負担がない点が魅力です。
表面に細かい凹凸のある、塩化ビニール樹脂の床材も、滑りにくく転倒防止になります。
床の変更にかかる費用は床材や工法により異なりますが、クッションフロアなら4万〜8万円程度、重ね張り工法なら3万〜6万円程度です。
断熱リフォームで冷えを解消する
トイレの寒さが気になる場合は、断熱リフォームがおすすめです。
トイレやトイレの周りには冷暖房がないことが多く、廊下や玄関などの冷えた空気が集まりやすくなります。
特に冬には、暖かい部屋から寒いトイレに行くことで血圧が上下し、心臓や血管の疾患を引き起こす「ヒートショック」のリスクが高まります。
排尿・排便時に力むと特に血圧が上がりやすく危険なので、内窓や暖房設備の設置といった断熱リフォームで冷えを解消することが重要です。
例えば内窓の設置は、5万〜10万円程度の費用で可能です。
照明を交換する
トイレの安全性を高めるリフォームとして、照明の交換も挙げられます。
高齢になり目が悪くなった方の場合、照明が薄暗いと足元までしっかりと見えにくくなります。
特に夜間は足元を確認しにくく、つまづいてケガをしてしまうリスクがあるでしょう。
天井に照明がついていても、足もとは自分や物の影により暗いことがあります。
小型照明ならリーズナブルなものもあるので、まずは1つ取り付けてみると安心です。
なお、照明の交換にかかる費用は3万〜6万円程度、照明の増設にかかる費用は5万〜15万円程度です。
呼び出しボタンを設置する
トイレで何かトラブルがあった時の備えとして、呼び出しボタンを設置することもおすすめです。
トイレでは、転倒やヒートショックなどのトラブルが発生する可能性があります。
しかし、家族がいるリビングや寝室とは隔てられていて、何かあっても助けを呼びにくいことが多いでしょう。
しかし、呼び出しボタンがあれば安心してトイレを利用できます。
介護が必要な方でも1人でトイレに行きやすくなるため、「人にトイレの世話をしてほしくない」「1人でできることはなるべく1人でやりたい」という方にもおすすめです。
呼び出しボタンは2万〜30万円程度で設置できます。
介護トイレリフォームに補助金を利用する際の注意点
トイレリフォームで補助金を利用する際には、注意点もあります。
これから解説する注意点を押さえていないと、補助金制度を利用できないことがあるので、しっかり確認しておきましょう。
事前に申請する
自治体による補助金・助成金の多くは、事前申請が必要です。
単に申請をするだけでなく、申請受理通知書が発行されてから着工しなければならないケースもあるので、申請や着工のタイミングはよく確認しておきましょう。
また、補助金や助成金の予算は年度ごとに組まれることが多く、毎年4〜5月ごろに受け付けが始まる傾向にあります。
申請期限は翌年であったり、上期と下期とで分けられていたりとさまざまです。
いずれにしても予算に達し次第、期限前でも受け付けが締め切られることがあります。
早めの申請がおすすめです。
工事完了期間も確認する
トイレリフォームで補助金や助成金の申請をする場合は、受け付け期間や着工日だけでなく、工事完了期間も確認しましょう。
補助金や助成金の中には、工事完了期間が申請期限よりも前に設定されていることがあります。
例えば申請期限が3月31日でも、工事は3月15日までに終わっていなければならないケースがあるのです。
一方で、申請をしてから着工しなければならないケースもあるため、検討している補助金・助成金ごとにスケジュールを入念に確認しておきましょう。
申請が可能な対象者であることを確認する
トイレリフォームで補助金や助成金の申請をする場合は、申請者自身が対象者であるかも要チェックポイントです。
例えば自治体による補助金・助成金は、基本的に以下の点が対象者の条件となっています。
- その自治体に住民登録されている
- リフォームする住居がその自治体にある
他にも、住民税は滞納していないか、過去に同じ制度を利用していないかといった条件があったり、年齢の制限があったりする場合があります。
細かい条件は自治体によっても異なるため、ホームページや役所の窓口にてご確認ください。
工事業者の制限があるか確認する
リフォームを依頼する工事業者に制限があるかどうかも、事前に確認しておきましょう。
補助金・助成金の中には、一定の条件を満たす工事業者に依頼しなければ利用できないものもあります。
申請者が工事業者を自由に選べるケースもありますが、「同じ自治内内に主たる営業所がある業者」「役所が選定する業者」などの制限が設けられていることもあるのです。
事前に確認しておきましょう。
高齢者の介護トイレリフォームを成功させるためのポイント
最後に、高齢者のご自宅でのトイレリフォームを成功させるポイントとして、以下2点を解説していきます。
- 介護保険を利用できるかケアマネージャーに相談する
- 工事中に利用できるトイレを確保する
介護保険を利用できるかケアマネージャーに相談する
介護保険を使って補助金を受けたい場合は、まずケアマネージャーに利用の条件・要件を相談することが必要です。
そしてどのようなリフォームが適しているのか、ご本人の状況を踏まえて一緒に検討したら、リフォーム会社に連絡をとり、具体的なプランニングをしてもいます。
その後、事前申請をしてリフォームを開始し、完了後に改めて事後申請をします。その後、補助金が申請される仕組みです。
なお、補助金の支給よりも先にリフォーム会社への支払いが発生するため、別途費用は用意しておきましょう。
工事中に利用できるトイレを確保する
工事中に利用できるトイレの確保も、見落とせないポイントです。
トイレのリフォーム中、そのトイレは使えません。
ポータブルトイレや仮設トイレの利用を検討しましょう。
近くにトイレを利用できる施設がある場合でも、夜間は防犯上、利用しにくい場合があります。
別途対策をしておくと安心です。
なお、仮設トイレの設置には費用がかかります。
また、簡易的な造りである分、使いにくかったりバリアフリー設計になっていなかったりすることもあるので、利用時には安全面にも注意しましょう。
高齢者の介護トイレリフォームは補助金を利用して賢く行おう
高齢者のご自宅のトイレリフォームは、補助金制度や減税制度によってお得に実施できます。
補助金制度にはさまざまなものがあり、お住まいの自治体によっても異なるため事前にしっかり調べ、賢く利用しましょう。
山根木材では、これまで多くの高齢者向けトイレリフォームを実施してきました。
広島エリアの最新の補助金情報も把握しているため、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
※弊社では、広島県内を施工エリアとさせていただいています。