注文住宅やリノベーションを検討する中で、「家族とつながりながらも、一人でくつろげる居場所が欲しい」と考えたことはありませんか?そんな願いを叶える空間として、近年注目を集めているのが「ヌック(Nook)」です。
SNSなどで見かけるおしゃれな「おこもり空間」に憧れる一方で、「実際に作っても使わなかったらどうしよう」「狭い家でも設置できるのか」といった不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ヌックの正しい意味や定義から、後悔しないための具体的な間取り実例、快適に過ごせる広さや寸法の目安、そして気になる費用相場までを網羅的に解説します。
メリットだけでなく、デメリットやその対策もしっかりと理解して、あなたの暮らしに最適なヌックを見つけましょう。
ヌックの意味と定義

スコットランド語源のこぢんまりとした居心地よい空間
ヌック(Nook)とは、広くて開放的な部屋とは対照的に、「こぢんまりとした居心地の良い隠れ家のようなスペース」を指す言葉です。
もともとはスコットランド語の「Neuk(ヌーク)」が語源とされており、かつては暖炉のそばに設けられた暖かくて小さな休息場所を意味していました。
現代の日本の住宅においては、ドアで完全に仕切られた個室ではなく、リビングや廊下、階段下などの一角に設けられた「ゆるやかに区切られた小空間」のことを指します。
形状や設置場所に明確な決まりはありませんが、壁のくぼみを利用したり、段差をつけて小上がりにしたりすることで、他の空間とは異なる「おこもり感」を演出するのが特徴です。
コロナ禍を経て自宅で過ごす時間が増えた昨今、家族と同じ空間にいながらも、少しだけ距離を置いて読書をしたり、趣味に没頭したりできる「第三の居場所」として、ヌックの需要は急速に高まっています。
単なるデッドスペースの活用にとどまらず、暮らしを豊かにする重要な要素として定着しつつあります。
書斎や小上がりやアルコーブとの違い
ヌックとよく似た空間として、「書斎」「小上がり」「アルコーブ」などが挙げられますが、それぞれの役割や定義には明確な違いがあります。
これらを混同してしまうと、理想の暮らしとズレが生じてしまうため注意が必要です。
まず「書斎」は、主に仕事や執務を行うための「個室」としての機能が強く、ドアや壁でしっかりと区切られ、遮音性や集中力が重視されます。
一方、ヌックはドアを設けず、LDKなどの生活空間とつながっていることが前提であり、集中よりも「リラックス」や「家族の気配を感じること」に重きを置いています。
「小上がり」は床面を高くした畳スペースなどを指しますが、これは空間の作り方の一種であり、広義にはヌックに含まれることもあります。
ただし、小上がりは客間や寝室として多目的に使われることが多いのに対し、ヌックはより個人的な「居場所」としての性格が強いです。
また、「アルコーブ」は部屋や廊下の一部をくぼませた空間を指す建築用語です。
ヌックはこのアルコーブの形状を利用して作られることが多いため密接な関係にありますが、アルコーブが構造上の形状を指すのに対し、ヌックはその場所で過ごす「心地よさ」や「機能」を含んだ概念といえます。
設置する3つのメリットと後悔しやすいデメリット

LDKと緩やかにつながるおこもり空間
ヌックを設置する最大のメリットは、家族とのコミュニケーションを維持しながら、プライベートな時間を楽しめる点にあります。
開放的なリビングは魅力的ですが、時にはテレビの音や家族の話し声から少し離れて、一人になりたいと感じることもあるでしょう。
そんな時、完全に個室にこもってしまうと家族の様子が分からなくなってしまいますが、リビングの一角にあるヌックなら、程よい距離感を保つことができます。
例えば、子供がリビングで遊んでいる気配を感じながら、親はヌックで読書をしたりコーヒーを飲んだりする。
あるいは、パートナーがキッチンで料理をしている音を聞きながら、タブレットで映画を楽しむ。
このように、視線や音を完全に遮断するのではなく「緩やかにつながる」ことで、安心感とプライベート感の両立が可能になります。
壁や天井の高さ、床の素材を変えるなどの工夫でゾーニングすることで、同じ部屋にいながら気持ちを切り替えられる心理的な効果も大きな魅力です。
デッドスペースの有効活用と収納機能
ヌックは、本来なら使い道がなく余ってしまいがちな「デッドスペース」を有効活用できるという点でも、非常に合理的なアイデアです。
特に注文住宅においては、階段の下、窓際の柱と柱の間、廊下の突き当たりなど、構造上どうしても生まれてしまう小さな隙間が存在します。
こうしたわずか1畳〜2畳程度のスペースでも、ベンチや本棚を作り付けることで、立派なヌックへと生まれ変わります。
ただの通路や壁だった場所が、家族のお気に入りの居場所に変わることで、家全体の床面積を無駄なく使い切ることができるのです。
さらに、ヌックは収納スペースとしても優秀です。
例えば、ベンチの座面下を引き出し収納にしたり、壁面を本棚にしたりすることで、リビングに散らかりがちな子供のおもちゃや雑誌、ブランケットなどをすっきりと片付けることができます。
居場所としての機能と収納としての機能を兼ね備えることで、限られた居住スペースを最大限に活かすことが可能です。
空調の効きにくさと物置化するリスク
魅力的なヌックですが、設置して後悔しやすいデメリットも存在します。
その代表的なものが「空調管理の難しさ」と「物置化するリスク」です。
これらを事前に理解し、対策を講じておくことが成功の鍵となります。
まず空調についてですが、ヌックは三方を壁に囲まれたり、奥まった場所に作られたりすることが多いため、リビングのエアコンの風が届きにくく、夏は熱がこもりやすく冬は寒くなりやすい傾向があります。
特におこもり感を重視して開口部を狭くしすぎると、空気の循環が悪くなります。
対策としては、サーキュレーターを併用する、小窓を設けて通風を確保する、あるいは床暖房をヌックまで延長するなどの計画が必要です。
また、「作ったけれど結局使わずに、洗濯物や段ボールの一時置き場になってしまった」という失敗談も少なくありません。
これは、具体的な利用目的を決めずに「なんとなくおしゃれだから」と設置してしまった場合に起こりがちです。
「ここで本を読む」「子供が宿題をする」といった具体的な用途を明確にし、そのために必要な照明やコンセント、テーブルのサイズを設計段階でしっかりと練り上げることが重要です。
採用したい場所別のおしゃれな間取り実例

家族の気配を感じるリビングヌック
リビングの一角に設ける「リビングヌック」は、最もポピュラーで使い勝手の良いスタイルです。
LDKという家の中心にありながら、壁の一部をくぼませたり、床レベルを一段下げたり(ダウンフロア)することで、心理的な境界線を作り出します。
このタイプは、家族団らんの輪から外れることなく、自分の時間を持ちたい人に最適です。
例えば、ソファとは別に窓際にヌックベンチを設けることで、来客時にはゲストの座る場所としても活用できますし、子供が小さいうちは親の目の届く「お昼寝スペース」や「キッズスペース」としても重宝します。
リビングのインテリアと調和させつつ、ヌック部分だけアクセントクロスを使ったり、天井を低くして木張りにしたりすることで、空間にメリハリが生まれます。
リビング全体が広く見える効果もあり、機能性とデザイン性を両立させやすい配置と言えるでしょう。
コンセントを設置しておけば、スマホの充電やパソコン作業も快適に行えます。
秘密基地のような階段下ヌック
階段下は、通常は収納やトイレとして使われることが多い場所ですが、ここをあえてオープンな「階段下ヌック」にすることで、秘密基地のようなワクワクする空間が誕生します。
天井が斜めに下がっている独特の形状が、包み込まれるような安心感を生み出し、特にお子様やペットの居場所として大人気です。
大人が使う場合でも、座って過ごす分には天井の低さは気になりにくく、むしろその狭さが落ち着きをもたらします。壁一面に本棚を造作して「おこもり読書室」にしたり、小さなデスクを入れて「ミニ書斎」にしたりと、アイデア次第で様々な使い方が可能です。
ただし、階段下は光が届きにくく暗くなりやすいため、照明計画が非常に重要です。ブラケットライトやダウンライトを設置して手元を明るく照らせるようにしましょう。
また、階段の足音が響きやすいという構造上の特性もあるため、静寂を求める作業よりは、リラックスや遊び場としての利用に向いています。
ベンチを置く窓際リーディングヌック
海外のインテリアでよく見られるのが、出窓や窓際のスペースを活用した「ウィンドウ・ベンチ」とも呼ばれるリーディングヌックです。
窓枠に合わせて造作ベンチを設置し、クッションをたっぷりと並べることで、外の景色を眺めながらゆったりと読書やお茶を楽しめる贅沢な空間になります。
自然光がたっぷりと入るため、昼間は照明いらずで明るく、開放感も抜群です。
窓の外に庭の緑や空が見えるように配置すれば、四季の移ろいを感じながらリフレッシュすることができます。ベンチの下を収納にすれば、本やおもちゃを片付けるスペースも確保できます。
注意点としては、窓際は外気の影響を受けやすいため、断熱性能の高いサッシ(ペアガラスやトリプルガラス)を採用することが必須です。
また、直射日光が当たりすぎると暑くて座っていられないこともあるため、ブラインドやカーテン、軒(のき)の深さで日差しをコントロールする工夫も求められます。
家事の合間に休めるダイニングキッチン横ヌック
キッチンやダイニングのすぐ横に設けるヌックは、忙しい家事の合間に「ちょこっと休憩」をするのに最適な場所です。
料理の煮込み時間に座ってレシピを確認したり、お茶を飲んで一息ついたり、あるいは子供が親のそばで宿題をするスタディスペースとしても活躍します。
ダイニングテーブルとは別に、小さなカウンターやベンチがあるだけで、生活のリズムにゆとりが生まれます。「パントリー(食品庫)」の一部を広げてヌックにするケースや、キッチンの背面収納の一部をデスクスペースにするケースなど、間取りの工夫次第で省スペースでも実現可能です。
この場所は家事をしながらでも会話がしやすいため、家族のコミュニケーションハブとしての機能も果たします。
朝の忙しい時間帯に簡単な朝食をとる場所として、あるいは夜に夫婦で晩酌を楽しむバーコーナーとしてなど、時間帯によって多様な使い方ができるのも魅力の一つです。
快適に過ごせる広さと寸法の目安

座るだけの1畳と寝転がれる2畳から3畳
「ヌックを作りたいけれど、どれくらいの広さが必要なの?」というのは、多くの方が抱く疑問です。
結論から言えば、ヌックは広すぎると逆に落ち着かなくなるため、1畳〜3畳程度が最も快適なサイズ感と言われています。
最小限の「1畳(約1.65平米)」があれば、大人が一人で座って読書をしたり、考え事をしたりするには十分な広さです。
階段下や部屋のコーナーを利用する場合、このサイズ感が一般的です。
まさに「おこもり感」を最優先したい場合に適しています。
もし、足を伸ばして寝転がりたい、あるいは子供と二人で並んで座りたいと考えるなら、「2畳〜3畳」の広さを確保するのがおすすめです。
2畳あれば、シングルベッド程度のスペースになるため、横になって昼寝をすることも可能です。
また、小さめのテーブルを置いて作業をするなど、用途の幅もぐっと広がります。
狭小住宅であっても、廊下やデッドスペースをうまく取り込めば、1.5畳程度のヌックを作ることは十分に可能です。
大人がくつろげる奥行き60cmと高さ40cm
広さ(面積)だけでなく、造作ベンチやカウンターの「寸法」も、居心地の良さを左右する重要な要素です。
ここを間違えると、「狭くて座り心地が悪い」「高すぎて足が浮く」といった失敗につながります。
ベンチタイプのヌックを作る場合、座面の奥行きは最低でも45cm、あぐらをかいたりクッションを背にゆったり座ったりしたい場合は60cmを確保しましょう。
奥行きが60cmあれば、体育座りをしたり、子供が寝転んだりすることも余裕を持ってできます。
また、座面の高さは40cm〜42cm程度が一般的です。
これは標準的なダイニングチェアと同じくらいの高さで、立ち座りがしやすく、足が床にしっかりつくため疲れにくい高さです。
もし、座面の下を収納にする場合は、収納力を確保するために高さを上げたくなるかもしれませんが、高すぎるとリラックスできなくなるため注意が必要です。
窓台(出窓)をベンチとして利用する場合も、この高さを基準に窓の位置を設計する必要があります。
空間をおしゃれに仕上げるインテリアのコツ

緩やかに仕切るアーチ状の垂れ壁
ヌックを単なる「部屋の隅」ではなく、特別な空間として演出するために最も効果的なのが、開口部のデザインを工夫することです。
特におすすめなのが、入り口の上部をアーチ状(曲線)にした「R垂れ壁(アールたれかべ)」です。
四角い開口部だと事務的な印象になりがちですが、柔らかな曲線を取り入れることで、視覚的に「ここから先は別の空間」というサインになり、優しさや可愛らしさが生まれます。
アーチだけでなく、三角屋根のような「三角垂れ壁」にすれば、絵本に出てくるお家のような遊び心のある空間になり、子供たちにも喜ばれます。
垂れ壁を設置することは、空間を緩やかにゾーニングする効果もあります。扉をつけて閉ざすわけではないので、開放感を保ちつつも、中に入ると包まれているような安心感を得ることができます。
リノベーションや新築時には、ぜひ大工さんや設計士に相談して取り入れたいデザインポイントです。
空間に深みを出すアクセントクロスとブラケットライト
狭い空間だからこそ、インテリアで冒険できるのもヌックの醍醐味です。
リビング全体には使いにくい大胆な色や柄の壁紙(クロス)も、ヌックの中だけのアクセントクロスとしてなら、空間の良いスパイスになります。
例えば、落ち着いたネイビーやグレーを選べば没入感のある読書スペースに、北欧風の柄物や明るいイエローを選べば楽しいキッズスペースにと、色の選び方一つで雰囲気をガラリと変えることができます。
また、壁だけでなく天井にもクロスを貼ったり、木材を張ったりすることで、より「おこもり感」が強調されます。
照明計画も重要です。
部屋全体を照らすシーリングライトではなく、壁に取り付ける「ブラケットライト」や、天井から吊るす小ぶりな「ペンダントライト」を選ぶと、雰囲気のある空間になります。
温かみのある電球色のライトを選び、手元を優しく照らすように配置すれば、夜にはバーのような大人な隠れ家としても楽しむことができます。
設置にかかる費用相場とよくある質問
新築時の造作費用10万円から30万円
注文住宅を新築する際に、最初からヌックを計画に組み込む場合、追加でかかる費用はおおよそ10万円〜30万円程度が相場です。
この費用には、ベンチや本棚などの造作家具工事、壁紙の変更、照明器具の設置などが含まれます。
ただし、これはあくまで目安です。
単に壁をくぼませて床を貼るだけのシンプルなものであれば数万円で済む場合もありますし、こだわりの無垢材を使ったり、造作収納を作り込んだり、専用の窓や空調を追加したりすれば、50万円を超えることもあります。
コストを抑えるポイントとしては、複雑な造作家具を減らすことです。
造り付けのベンチを作る代わりに、市販の家具やビーズクッションを置くスタイルにすれば、大工手間や材料費を大幅にカットすることができます。
予算に合わせて、どこまでを作り付けにするかを相談しましょう。
リフォーム価格20万円から50万円
既存の住宅(マンションや戸建て)をリフォームしてヌックを新設する場合、費用相場は20万円〜50万円程度と、新築時よりもやや割高になる傾向があります。
これは、既存の壁を解体したり、床を補強したりする工事が必要になるためです。
例えば、押し入れやクローゼットを解体してヌック(ワークスペース)に作り変えるリフォームは人気がありますが、この場合、解体撤去費、内装工事費、電気工事費などがかかります。
また、窓際にベンチを作る場合でも、既製品の家具を置くだけなら安く済みますが、窓枠に合わせてピッタリとしたベンチを造作する場合は、オーダーメイド家具としての費用が発生します。
リノベーション全体の予算の中で、どの程度ヌックに費用を割けるかを検討し、場合によっては部分的なDIYを組み合わせるなどしてコスト調整を行うのが賢明です。
賃貸やDIYで簡易的に作る方法
「賃貸だから工事はできない」「予算がない」という場合でも、工夫次第でヌック風の空間を作ることは可能です。
DIY(Do It Yourself)を取り入れて、簡易的なヌックを作ってみましょう。
最も簡単な方法は、カラーボックスを活用することです。
強度のあるカラーボックスを横に並べ、その上に天板を渡し、クッションを置くだけで「収納付きベンチ」が完成します。
これを部屋のコーナーや窓際に配置すれば、立派なヌックになります。費用も数千円〜1万円程度で済みます。
また、突っ張り棒とカーテンを使って部屋の一角を仕切るだけでも、おこもり感は演出できます。
その中にラグを敷き、お気に入りの一人掛けチェアやビーズクッション、小さなサイドテーブル、スタンドライトを置けば、工事不要で自分だけの秘密基地が出来上がります。
賃貸でも諦めずに、家具の配置やファブリックの工夫でヌックライフを楽しんでみてください。
まとめ
ヌックとは、単なるスペースの名称ではなく、家族とのつながりと一人の時間を両立させる「豊かな暮らしの仕掛け」です。
1畳から2畳というわずかなスペースでも、工夫次第で読書、休憩、遊び場と、無限の可能性を秘めた居心地の良い場所になります。
後悔しないためには、見た目のおしゃれさだけでなく、「誰が、何のために使うのか」という目的を明確にし、空調や収納などの機能面もしっかりと計画することが大切です。
新築やリノベーションを検討中の方は、ぜひこの記事で紹介した寸法や実例を参考に、あなただけの素敵なヌックを実現してください。
家の中に「帰りたくなる特等席」があるだけで、毎日の暮らしはもっと楽しく、心地よいものになるはずです。
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