「注文住宅の費用が予算をオーバーしてしまった」という声のなかには、「諸費用」を見落としていたケースが見られます。
注文住宅では、土地代・建物代以外にも、外構工事費用や登記費用、地盤改良費用、火災保険料など、さまざまな諸費用が発生することを忘れてはいけません。
この記事では、注文住宅にかかる諸費用の内訳や金額の目安を、初心者にもわかりやすく解説します。
家づくりの見積もりに含まれず盲点になりがちな費用や、住宅ローンでまかなえる費用・まかなえない費用についても詳しく紹介するので、注文住宅の予算検討時の参考にしてください。
どんな費用が含まれる?注文住宅の「諸費用」とは
注文住宅を検討していると、土地代や建物の「本体価格」、建築費の「坪単価」といった表面上の費用ばかりに目が行きがちです。
しかし、これらの費用は家づくりにかかる費用の一部に過ぎず、実際にはそれ以外にも細かな費用が多く発生します。
こうした費用は総称して「諸費用」と呼ばれ、建築会社によっては見積もりには含まれないことも多いため、注意が必要です。
諸費用に含まれる項目は、土地取得時の費用、各種税金、ローン手数料、登記費用など多岐にわたります。
以下では、諸費用とはどのようなもので、具体的にいくらくらい見込めばよいのか見ていきましょう。
本体価格以外にかかる「見落としがちな」諸費用まとめ
土地代や建物の本体価格以外にかかる、主な諸費用をまとめると次のとおりです。
項目 | 内訳 |
土地関連費用 | 仲介手数料、登記費用、不動産取得税、固定資産税精算金など |
建築関連費用 | 地盤調査費用、建築確認申請費用、外構工事費用、地鎮祭や上棟式の実施費用など |
住宅ローン関連費用 | 金融機関の融資手数料、ローン保証料、団体信用生命保険料(金利に上乗せの場合も)、火災保険・地震保険料など |
その他の費用 | 引っ越し費用、家具・家電の購入費用、仮住まい費用など |
依頼する建築会社によって、見積もりに含まれる費用の範囲が異なります。
例えば、建築関連費用は「付帯工事費」として見積もりに含む会社も多いでしょう。
一方で上記のうち複数の費用が、「別途請求」として見積もり金額に含まれないケースもあるので注意が必要です。
諸費用の目安は総額の10〜20%が相場
諸費用は、土地代と建物代の総額の10〜20%程度が一般的な目安です。
例えば、総額4,000万円の家を建てる場合であれば、諸費用は400〜800万円程度という計算になります。
新たに土地から購入するケースでは、仲介手数料や不動産取得税などの費用がかかることから、所有する土地に建物を建てるケースに比べて、諸費用の割合が高くなる傾向にあります。
建築費以外にも、住宅ローンや保険、引っ越しなど、工事とは直接関係しない支出も少なくありません。
こうしたことから、最初に見積もりで提示された「本体価格」のみで資金計画を立てると、後から資金不足に陥るリスクがあるでしょう。
土地購入で発生する諸費用や安く抑えるコツは、こちらの記事をご覧ください。
注文住宅にかかる諸費用の内訳と相場一覧
ここでは、注文住宅にかかる諸費用の内訳と相場を、以下のように分類しました。
- 土地の購入でかかるもの
- 建物の建築でかかるもの
- 住宅ローン契約でかかるもの
- その他でかかるもの
以下で詳しく解説します。
土地の購入でかかる諸費用の内訳と相場
新たに土地を購入して注文住宅を建てる場合、土地本体の購入費用以外にもさまざまな諸費用が発生します。
土地購入時にかかる、主な諸費用の項目と金額の目安を見ていきましょう。
項目 | 概要 | 一般的な相場 |
登録免許税 | 土地の所有権移転登記にかかる税金 | 土地価格×1.5%(※2026年3月31日までの軽減税率) |
不動産取得税 | 土地取得に対してかかる税金 | 土地の固定資産税評価額×3%(※軽減措置あり) |
印紙税 | 土地の売買契約書に印紙を貼付して納める税金 | 5,000円〜3万円程度(土地の価格による) |
固定資産税・都市計画税の精算金 | 売主が先払いしている固定資産税・都市計画税のうち、土地の引渡し日から年末までの日割り分 | 固定資産税・都市計画税の金額や、引渡し日から年末までの日数に応じて異なる |
司法書士への支払い報酬 | 所有権移転登記を依頼する司法書士に支払う報酬 | 5万円〜10万円程度 |
仲介手数料 | 不動産会社の仲介で土地を購入した場合に支払う手数料 | 土地価格×3%+6万円+税が上限(※土地価格400万円超の場合、土地価格2,000万円なら72.6万円) |
建物の建築でかかる諸費用の内訳と相場
建築においては、建物本体工事以外にも準備や設計、付帯工事、儀礼などに費用がかかります。
主な費用項目と相場は次のとおりです。
項目 | 概要 | 一般的な相場 |
地盤調査費・地盤改良工事費 | 建物を建てる前の地盤調査、地盤改良が必要な場合の工事にかかる費用 | 調査費用:5万〜10万円程度 工事費用:50万〜100万円程度 |
建築確認申請費用 | 確認申請の手続き、必要書類の作成にかかる費用 | 10万〜20万円程度 |
外構工事費 | 門・フェンス・駐車場などの外構工事にかかる費用 | 50万〜150万円程度 |
ライフライン費用 | 上下水道・電気・ガスなどを引き込んだり、配管を敷設したりする費用 | 20万〜50万円程度 |
設計監理費 | 設計業務や工事監理業務にかかる費用 | 建物価格の10%程度 ※会社による |
儀礼費 | 上棟式や地鎮祭などの儀礼にかかる費用(※実施する場合) | 5万〜10万円程度 |
住宅ローン契約でかかる諸費用の内訳と相場
土地購入や注文住宅の建築に住宅ローンを利用する場合、ローン契約に伴う各種費用も発生します。
住宅ローン関連でかかる費用項目と相場は次のとおりです。
項目 | 概要 | 一般的な相場 |
融資手数料 | 融資する金融機関に対して支払う手数料 | 定額型:3万〜5万円程度 定率型:借入額の2%前後 ※4,000万円を借り入れる場合は80万円前後 |
ローン保証料 | 保証会社に対して支払う手数料 | 外枠方式:借入額の2%程度を一括前払い 内枠方式:借入金利に年0.2%程度を上乗せ |
火災保険料・地震保険料 | ・ほとんどの住宅ローンで加入必須となる火災保険(地震保険も併せて加入するケースが多い)の保険料 | 5年一括払いで30万〜40万円程度(地震保険も含む) ※建物の構造や補償内容、所在地によって保険料は前後する |
つなぎ融資・分割融資にかかる利息や手数料 | 住宅ローン融資実行前の土地購入や工事中に資金が必要な場合、つなぎ融資や分割融資を使用するときにかかる費用 | 利息支払い:年1〜3%程度 事務手数料:数万円程度 |
その他の諸費用の内訳と相場
新たなマイホームが完成しても、すぐに新生活をスタートできるわけではありません。
前の自宅からの引っ越しに費用がかかるほか、状況によっては仮住まいを準備しなければならないケースもあります。
そのため、次に挙げる費用も資金計画に盛り込んでおきましょう。
項目 | 概要 | 一般的な相場 |
引っ越し費用 | 前の自宅から新居、自宅から仮住まい、仮住まいから新居に引っ越すときの費用 | 1回あたり10万〜20万円程度(※荷物量、引っ越し距離、時期などによって異なる) |
仮住まい費用 | 建て替えや売り先行で、仮住まいを別に用意する場合の家賃支払いなど | 家賃数ヶ月分+礼金・仲介手数料+引っ越し2回分など |
家具・家電の購入費 | 新居用に家具や家電を新調する場合の費用 | 50万〜150万円程度(※必要な物の量によって異なる) |
前の自宅で使用している家具や家電を新居でも引き続き使用すれば、購入費を抑えられます。
一方で、家財が増える分、引っ越し費用は高くなりがちです。
なお、仮住まいが必要になる場合は、引っ越し費用が2回分かかるうえ、礼金や敷金といった初期費用も発生するため、予想以上に負担が大きくなりやすい点に注意しましょう。
コストバランスや物理的な負担も考慮し、家具や家電をどれくらい買い換えるのか検討しましょう。
注文住宅の諸費用は住宅ローンで借り入れできる?
注文住宅の予算を組むにあたり、前述の諸費用をどこまで住宅ローンに含められるかどうかが大きなポイントになります。
すべての諸費用を自己資金で支払うのか、ローンに含めるかで、当面の資金繰りや今後の返済負担は大きく変わるでしょう。
ここでは、住宅ローンの借入対象になる費用と対象にならない費用について、わかりやすく解説します。
住宅ローンで「借入対象になる」費用と「対象外になる」費用
すべての費用のうち、住宅ローンに含められる費用・含められない費用をまとめたのが以下の表です。
住宅ローンに含められる費用 | 住宅ローンに含められない費用(自己資金が必要) |
・土地取得費 ・建物の本体工事費 ・その他の建築費(付帯工事費など) ・一部の諸費用 (登記費用、融資手数料、保証料、団信保険料など) |
・火災保険料、地震保険料(金融機関によっては住宅ローンに組み込める場合あり) ・仮住まい費用 ・引っ越し代 ・家具や家電の購入費用 ・不動産取得税 |
上記はあくまで一例であり、同じ費用であっても、住宅ローンに含めるか否かは金融機関によって異なります。
また、諸費用を含められたとしても、借入額がその分大きくなるため、審査のハードルが上がる点は注意が必要です。
つなぎ融資・諸費用ローンを活用しよう
通常の住宅ローンは、建物の完成・引き渡し時に本格的な融資が実行されるのが一般的です。
土地購入にかかる費用や着工金・中間金などの支払いに、融資が間に合わないケースも少なくありません。
こうした本融資実行までの一時的な資金を確保するためのローンが「つなぎ融資」です。
つなぎ融資を利用する場合、金利が年1〜3%程度と高めに設定されている点や、手数料も別途必要になる点に注意しましょう。
諸費用もローンでまかないたい場合、「諸費用ローン」を利用するという選択肢もあります。
これにより、登記費用や融資手数料などの支払いに備えて、本融資前でも必要な資金を確保できます。
ただし、諸費用ローンは住宅ローンと別枠での借り入れとなるため、返済が並行する期間が生じる可能性があります。
また、金利や手数料の負担もあるため、返済スケジュールや総返済額のシミュレーションは不可欠です。
いずれのローンを利用する場合も、複数の金融機関で金利や諸条件を比較し、住宅ローンを含めた総合的な返済計画を立てたうえで判断しましょう。
住宅ローンの手続きについては、こちらの記事をご覧ください。
注文住宅の諸費用をシミュレーションしてみよう
諸費用の目安について見てきましたが、実際にどれくらいかかるのか、シミュレーションで体感してみましょう。
ここでは、総額5,000万円の注文住宅を購入するケースをモデルに、諸費用を具体的に試算していきます。
5,000万円の注文住宅にかかる諸費用の目安
注文住宅の総額5,000万円のうち、建物価格が3,500万円、土地価格が1,500万円として想定します。
諸費用は全体の10%にあたる約500万円を目安とし、項目ごとの費用感を試算したものが次の表です。
諸費用の項目 | 金額の目安 |
登記費用(建物・土地) | 約30万円 |
仲介手数料(土地) | 約56万円 |
印紙税 | 約2万円 |
地盤調査・地盤改良工事費 | 約50〜80万円 |
建築確認申請・設計費 | 約50万円 |
火災保険料・地震保険料(5年一括) | 約30万円 |
ローン関連費用 | 約80万円 |
外構工事費 | 約100万円 |
引っ越し代、家具・家電購入費用 | 約80万円 |
合計 | 約500万円 |
実際の諸費用は、地盤の状態やローンの種類、保険内容、選び設備や仕様によって、大きく変動します。
特に、家具・家電購入費用はどこまで新調するか、どのグレードのものを選ぶかによって、10万円台〜100万円以上まで幅があります。
そのため、家づくりの早い段階で、どの範囲まで新調するかも含めて、諸費用の予算をあらかじめ試算しておくことが重要です。
注文住宅の諸費用を抑える4つのコツ!予算オーバーを防ぐ賢い家づくりとは
注文住宅は自由度の高い家づくりが魅力ですが、その分、こだわるほど費用がかさみがちです。
なかでも「諸費用」は見積もりに含まれない項目も多いため、気づいたときには予算をオーバーしているケースも少なくありません。
ここでは、諸費用を抑えて、予算オーバーを回避するために効果的なポイントを4つ紹介します。
仲介手数料不要の土地を選ぶ
不動産会社の仲介で土地を購入する場合、「土地価格×3%+6万円+税」を上限とする仲介手数料が発生します。
例えば、先ほどの1,500万円の土地であれば約56万円かかることになり、その負担は決して小さくありません。
一方で、ハウスメーカーや建築会社が自ら売主になっている土地であれば、仲介手数料はかかりません。
こうした土地は「建築条件付き土地」と呼ばれ、あらかじめ指定された建築会社で家を建てるという制限があるものの、土地価格が割安に設定されているケースも多く、トータルコストを抑えやすい傾向があります。
建築会社の自由度に制限はあるものの、仲介手数料がかからず、土地価格も比較的リーズナブルなケースが多いため、コスト削減の観点からは有力な選択肢といえるでしょう。
国や自治体の補助金や助成制度を上手に活用する
一定の条件を満たす注文住宅を新築する場合、国や自治体の補助金・助成金制度を活用できる可能性があります。
2025年度に利用できる代表的な制度が、「子育てグリーン住宅支援事業」と「ZEH支援事業」です。
補助金制度 | 概要 |
子育てグリーン住宅支援事業 | 高い省エネ性能を誇るGX志向型住宅、長期優良住宅・ZEH水準住宅(対象:子育て世帯・若者夫婦世帯)を新築する場合、1戸あたり40〜160万円の補助を受けられる制度。 |
ZEH支援事業 | ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の基準を満たす住宅を新築する場合、1戸あたり55万円(ZEH+は90万円)の補助を受けられる制度。 |
いずれも高性能な住宅に対する補助金であり、補助金や助成金を活用したいのであれば、住宅性能を高める必要があるといえるでしょう。
なお、制度は年度によって見直されるため、計画初期から最新情報をチェックし、申請スケジュールに遅れないよう手続きを進めることが重要です。
住宅ローンは諸費用込みで比較する
諸費用は全体費用の10%と考えても、数百万円単位の支出となるため、自己資金でまかなおうとすると手元資金が大きく減ってしまう可能性があります。
最近では、諸費用込みで借り入れできる住宅ローンも増加しているので、こうしたローンの活用を検討してもよいでしょう。
ローンを比較する際は「金利」だけでなく、融資手数料・ローン保証料・団信保険料などを含めた「総支払額」で検討しましょう。
検討時には、住宅ローンシミュレーターを上手に活用し、トータルコストで比較するのが賢い選び方といえます。
なお、定率型の融資手数料(例:借入額の2%など)は、借入額が大きいほど費用も高額になるため、注意が必要です。
金利の安さだけにとらわれず、「諸費用込み」でトータルに比較する視点を持つことが、後悔しない住宅ローン選びにつながります。
保険や補償を見直してムダな出費を減らす
火災保険や地震保険、団体信用生命保険(団信)など、住まいに関する保険にかかる費用が家計を圧迫することも少なくありません。
保険会社から提案された内容をそのまま選ぶのではなく、自分にとって本当に必要な補償かどうかを見極めましょう。
特に、火災保険と地震保険は、建てる家の構造や地域によって保険料が大きく変わります。
例えば、耐震等級の高い家は地震保険料が割引になるほか、耐火構造の家は火災保険料の割引が適用されるケースがあります。し
かし、火災保険に関しては、保険会社によって補償内容や金額が異なるため、比較せずに決めると割高な保険を選んでしまうかもしれません。
加えて、多くの住宅ローンで加入が義務付けられている団信にも気をつけたいところです。
住宅ローン金利に保険料が含まれている基本プランもあれば、金利上乗せでがんや三代疾病に備えられる特約付きプランも設定されています。
保険の内容を強化するほど安心感は増すものの、その分費用負担は大きくなります。
保険選びも「家づくりの一部」としてムダなく見直すことが、全体費用の削減につながるでしょう。
注文住宅のコストを抑える方法については、こちらの記事をご覧ください。
注文住宅の「諸費用」まで見据えた予算計画が後悔を防ぐカギ
注文住宅では、一般的に総額の10〜20%程度の諸費用が発生します。
「建物本体価格+土地代」だけで資金計画を立てると、諸費用で予算を大きくオーバーしてしまうかもしれません。
あらかじめ諸費用の項目と相場を把握し、資金計画に盛り込んでおくことが、予算内で満足のいく家づくりを実現するポイントです。
山根木材ホームなら、資金計画もまるごとサポート
山根木材ホームは、広島・福岡を拠点に家づくりを行う地域密着型の住宅メーカーです。
地元の気候や暮らしに精通した提案力で、お客様一人ひとりに合わせた無理のない資金計画と安心の住まいづくりをサポートしています。
初めての家づくりで「お金のことが不安…」という方も、まずは山根木材ホームにお気軽にご相談ください。
広島・福岡の土地や制度にも詳しいスタッフが、丁寧にサポートいたします。
お問い合わせ・資料請求は、下記お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。