共働き世帯の増加に伴い、家事の効率化は家づくりにおける最重要テーマの一つです。
「洗濯物をしまうのが大変」「家族の服がリビングに散らかりがち」といった悩みを解決する間取りとして、今「ファミリークローゼット」が大きな注目を集めています。
ファミリークローゼットを上手に取り入れれば、家事動線が劇的に改善し、暮らしにゆとりが生まれます。しかし、一方で「作らなければよかった」と後悔する声があるのも事実です。
この記事では、注文住宅でファミリークローゼットを検討している方へ向けて、後悔しないための最適な間取りパターンから、必要な広さの目安、おしゃれな収納アイデア、そしてメリット・デメリットと対策まで、あらゆる情報を網羅的に解説します。
この記事を読めば、あなたの家族にぴったりのファミリークローゼットが明確になり、理想の家づくりを実現できるでしょう。
ファミリークローゼット(ファミクロ)とは?ウォークインクローゼットとの違い

ファミリークローゼットとは、家族みんなの衣類や荷物を一か所にまとめて収納できる、共用の大型収納スペースのことです。
「ファミクロ」や「ファミリークローク」とも呼ばれ、注文住宅で非常に人気の高い間取りです。
一般的なウォークインクローゼット(WIC)が個人の寝室などに作られる「個人のための収納」であるのに対し、ファミリークローゼットは廊下や洗面所など家族の共有スペースに隣接する「家族のための収納」であり、家事動線の中心として機能する点が最大の違いです。
衣類を収納するだけでなく、中で着替えをしたり、アイロンがけをしたりと、多目的に使える空間として設計されることも多く、暮らしの利便性を大きく向上させます。
後悔しないファミリークローゼットの間取り成功パターン4選【実例付き】

ファミリークローゼットの成功は、間取り(配置)で9割決まると言っても過言ではありません。
ここでは、家事効率が格段にアップする代表的な4つの間取りパターンを、それぞれのメリット・デメリットと共に紹介します。
洗濯動線が最短になる「ランドリールーム隣接型」
「洗う→干す→しまう」という一連の洗濯動線を最短距離で完結させたい家族に最もおすすめなのが、この間取りです。
洗濯機のあるランドリールームや脱衣所のすぐ隣にファミリークローゼットを配置することで、乾いた洗濯物をたたんで、振り返るだけで収納できます。
各部屋のクローゼットまで運ぶ手間が一切なくなるため、家事の負担が劇的に軽減されるのが最大のメリットです。
特に小さなお子さんがいるご家庭では、着替えやタオルの出し入れもスムーズになります。
注意点としては、湿気がこもりやすくなるため、換気扇の設置や除湿機の活用が必須です。
また、30坪台のコンパクトな家でも、洗面脱衣室を少し広げてランドリースペース兼ファミリークローゼットとする間取りなら、効率的に実現可能です。
帰宅後すぐ片付く「玄関直結ウォークスルー型」
玄関からファミリークローゼットを通り抜けて、LDKや洗面所へアクセスできる「ウォークスルー」タイプの間取りです。
この間取りの最大のメリットは、帰宅後の動線が非常にスムーズになることです。
玄関で靴を脱いだら、そのままクローゼットに入り、コートやカバン、仕事着などを収納し、部屋着に着替えてからリビングでリラックスできます。
花粉やウイルスを室内に持ち込みにくいという衛生的なメリットもあります。
また、出かける際も、リビングからクローゼットを通って身支度を整え、そのまま玄関へ向かうことができ、朝の忙しい時間帯の渋滞緩和にも繋がります。
ただし、通路としての役割も持つため、両側に収納を設けると人が通りにくくなる可能性があり、通路幅の確保が重要になります。
家事が1階で完結する「リビング・洗面隣接型」
洗濯やアイロンがけ、収納といった家事のほとんどを1階で完結させたい方におすすめの間取りです。
重い洗濯物を持って階段を何度も往復する必要がなくなり、身体的な負担が大きく減ります。
特に平屋や、将来の暮らしやすさを見据えた家づくりで人気があります。
リビングやキッチンから近い場所に配置すれば、家事の合間にサッと片付けができ、LDKが散らかりにくくなる効果も期待できます。
30坪台の注文住宅でも、水回りを集中させ、その一角にファミリークローゼットを設けることで「一階完結」の間取りは実現可能です。
デメリットとしては、来客時に生活感が見えやすい可能性があるため、リビングから直接見えないように入口の位置を工夫したり、扉を設けたりする配慮が必要です。
プライバシーを確保しやすい「2階ホール設置型」
寝室や子ども部屋がある2階のホールや廊下にファミリークローゼットを設ける間取りです。
このパターンのメリットは、プライバシーを確保しやすい点にあります。
来客が頻繁にあるご家庭でも、家族のプライベートな収納スペースを見られる心配がありません。
各寝室からのアクセスも良いため、入浴後や就寝前の着替えもスムーズです。
洗濯物を2階のバルコニーで干す場合は、取り込んでからすぐにしまえるため、動線も効率的です。
ただし、1階で洗濯をする場合は、乾いた洗濯物を2階まで運ぶ手間が発生します。
また、帰宅後にコートなどをしまうために一度2階へ上がる必要があり、生活スタイルによっては手間に感じる可能性も考慮しましょう。
家族4人に最適な広さは3畳〜4畳?畳数別レイアウトと収納量の目安

「どのくらいの広さが必要?」というのは、誰もが悩むポイントです。
一般的に「家族の人数×0.5畳〜1畳」が目安とされますが、ここでは具体的な畳数ごとに、おすすめのレイアウトと収納力を解説します。
【2畳】ミニマル派や夫婦2人向けのコンパクト設計
2畳のファミリークローゼットは、夫婦2人暮らしや、持ち物が少ないミニマルなご家庭におすすめの広さです。
壁の一面のみに収納を設ける「I(アイ)型」レイアウトが基本となり、通路スペースも十分に確保できます。
4人家族の場合は、全員分の衣類を収めるには収納力が不足しますが、アウターや使用頻度の高い服を掛けておく「家族の共有クローク」として活用したり、パントリーや日用品ストックと兼用したりするなど、目的を絞って使うのに適しています。
限られたスペースでも、可動棚や2段のハンガーパイプを駆使すれば、見た目以上の収納力を発揮します。通路幅を確保しやすいため、人の出入りがスムーズな点もメリットです。
【3畳】4人家族の基本サイズ!I型・L字型レイアウト
4人家族でファミリークローゼットを検討する場合、最も標準的で失敗の少ない広さが3畳です。
3畳のスペースがあれば、壁の二面を使って収納を設けられる「L(エル)字型」レイアウトが可能になり、家族全員のオンシーズンの衣類を十分に収納できます。
通路幅も約1.5畳分確保できるため、朝の身支度で人がすれ違うことも可能です。
具体的には、壁一面にハンガーパイプを設置し、もう一面には可動棚と収納ケースを組み合わせることで、「掛ける収納」と「畳む収納」を効率的にゾーニングできます。
角の部分はデッドスペースになりやすいため、使用頻度の低いスーツケースや季節家電の置き場所にすると良いでしょう。
すべての衣類をここに収めたい場合は少し手狭になる可能性があるため、オフシーズンの服は子ども部屋のクローゼットにしまうなどの工夫が必要です。
【4畳以上】着替えも余裕!コの字型の大容量収納
4畳以上の広さを確保できる場合、壁の三面に収納を設けられる「コ(こ)の字型」レイアウトが可能になり、圧倒的な収納力を実現できます。
家族全員のオンシーズン・オフシーズンの衣類はもちろん、布団やスーツケース、アウトドア用品まで、家中のあらゆるものを一元管理できます。
通路スペースも広いため、姿見を置いて着替えをしたり、アイロンがけをしたりするワークスペースを設けることも可能です。
収納するモノの種類ごとにエリアを決められるため、どこに何があるか一目瞭然で、整理整頓しやすいのも大きなメリットです。
ただし、スペースが広い分、モノが増えすぎてしまい「物置」状態にならないよう、定期的な見直しを心がけることが大切です。
無印良品・IKEA活用!おしゃれで機能的な収納アイデア
使いやすいファミリークローゼットを実現するには、収納グッズの活用が欠かせません。
ここでは、人気ブランドのアイテムを使った、おしゃれで機能的な収納アイデアを紹介します。
シンデレラフィットが鍵!人気収納ケースの選び方
ファミリークローゼットの収納で最も重要なのが、棚やスペースにぴったり収まる「シンデレラフィット」する収納ケースを選ぶことです。
サイズがバラバラだと無駄なスペースが生まれ、収納力が半減してしまいます。
おすすめは、無印良品の「ポリプロピレン衣装ケース」やIKEAの「SKUBB(スクッブ)」シリーズです。
これらの商品はサイズ展開が豊富で、モジュールが統一されているため、買い足してもスッキリと組み合わせることができます。
設計段階で「このケースをここに置きたい」と決めておき、それに合わせて棚の奥行きや幅を造作すると、まるで作り付け家具のような美しい収納が完成します。
中身が見えないタイプを選べば生活感を隠せますし、半透明タイプならラベリングなしでも中身を把握しやすく便利です。
使い勝手が激変する可動棚とハンガーパイプの最適配置
収納の柔軟性を高めるために、棚は作り付けの固定棚ではなく、高さを自由に変えられる「可動棚」にすることを強くおすすめします。
子どもの成長に合わせて収納ケースの高さを変えたり、収納するモノが変わったりしても、無駄なくスペースを使い切ることができます。
また、ハンガーパイプは2段に設置すると収納力が倍増します。
一般的な高さの目安は、コートなど丈の長いものを掛ける上段を床から170cm〜180cm、シャツやジャケットを掛ける下段を床から90cm〜100cmに設定すると、大人の服が床に擦れず、使いやすい高さになります。
下段のパイプを子どもの手の届く高さに設定すれば、自分で服を選んだり片付けたりする習慣づけにも繋がります。
ファミリークローゼットのメリット・デメリット「いらなかった」と後悔しないために
多くのメリットがある一方で、計画を誤ると「いらなかった」と後悔につながる可能性もあります。
メリットとデメリット、そしてその対策をしっかり理解しておきましょう。
家事効率が劇的に向上する5つのメリット
- 家事動線がシンプルになる 洗濯物を各部屋に運ぶ手間がなくなり、収納までの動線が劇的に短縮されます。
- 衣類や荷物の管理がしやすい 家族の衣類が一か所に集まるため、全体量を把握しやすく、衣替えの手間も省けます。
- 各部屋がスッキリ片付く 各部屋に大きな収納家具を置く必要がなくなり、居住スペースを広く使えます。
- LDKが散らかりにくくなる 共有スペースに脱ぎっぱなしの服やカバンが放置されることが減ります。
- 身支度の時短に繋がる 家族全員の服がまとまっているので、コーディネートを考えたり、忘れ物を探したりする時間が短縮されます。
「いらない」となる5つのデメリットと完全対策
- 湿気がこもりやすい
- デメリット 衣類は湿気を吸いやすいため、対策をしないとカビやニオイの原因になります。
- 【完全対策】 設計段階で換気扇や小窓を設置しましょう。
24時間換気システムの換気ルート上に配置するのが最も効率的です。
また、除湿機やサーキュレーターを使うためのコンセントも忘れずに設置してください。
- 広いスペースが必要になる
- デメリット 家族全員分を収納するには最低でも2畳〜3畳のスペースが必要で、その分、居住スペースが狭くなる可能性があります。
- 【完全対策】 廊下の一部を兼ねるウォークスルー型にしたり、デッドスペースになりがちな階段下を活用したりと、間取りの工夫でスペースの圧迫感を軽減できます。
本当に必要なモノの量を見極め、過度に大きくしすぎないことも重要です。
- 朝の時間帯に渋滞しやすい
- デメリット 通勤・通学前の朝の忙しい時間帯は、家族が集中してしまい、着替えや準備で混雑することがあります。
- 【完全対策】 入口を2つ設けたウォークスルー型にすると、人の流れがスムーズになり渋滞を緩和できます。
また、通路幅を最低でも80cm以上確保するように設計しましょう。
- 思春期の子供が使用を嫌がる
- デメリット 子どもが思春期を迎えると、親と衣類が一緒にあることや、共用スペースで着替えることに抵抗を感じる場合があります。
これは「ファミリークローゼットいらなかった」という後悔に直結する深刻な問題です。 - 【完全対策】 設計段階で、将来のプライバシー問題に対応できる工夫を取り入れましょう。例えば、収納内部を棚などで緩やかにゾーン分けしたり、後からでもロールスクリーンやカーテンで間仕切りができるように下地を準備しておくのが有効です。
- デメリット 子どもが思春期を迎えると、親と衣類が一緒にあることや、共用スペースで着替えることに抵抗を感じる場合があります。
- 家族のプライバシーが確保しにくい
- デメリット 家族間であっても、見られたくない私物はあるものです。
収納場所がオープンすぎると、プライバシーの面でストレスを感じる可能性があります。 - 【完全対策】 全員が使うエリアと、個人が使うエリアを分けましょう。
例えば「アウターやタオルは共有棚、個人の衣類は各自の引き出し」といったルール作りが有効です。
扉付きの棚や蓋付きのボックスを活用するのも良い方法です。
- デメリット 家族間であっても、見られたくない私物はあるものです。
家づくりで失敗しないための設計Q&A
最後に、設計段階でよくある細かい疑問にお答えします。
換気扇や窓は必要?湿気とカビ対策
結論から言うと、換気対策は必須です。
ファミリークローゼットは衣類や布団など湿気を含みやすいモノが密集し、空気も滞留しやすいため、カビの温床になりかねません。
最も効果的なのは、湿度センサー付きの換気扇を設置することです。
一定の湿度になると自動で換気してくれるため、付け忘れの心配がありません。
小さな窓を設置して自然な風通しを確保するのも良い方法ですが、防犯面や断熱性の低下、日焼けによる衣類の傷みも考慮する必要があります。
最低でも、24時間換気システムの給気口や排気口をクローゼット内に計画してもらうよう、設計士に依頼しましょう。
除湿機を置くことも想定し、コンセントの設置も忘れないでください。
コンセントの最適な位置とおすすめの数は?
ファミリークローゼット内のコンセントは、意外なほど多くの場面で活躍します。
ないと後悔する可能性が非常に高いため、必ず設置しましょう。
具体的な用途としては、コードレス掃除機の充電、除湿機やサーキュレーターの使用、アイロンがけ、スマートフォンの充電などが挙げられます。
これらの用途を考慮すると、最低でも2ヶ所(2口コンセント×2)あると安心です。
設置する高さは、掃除機が使いやすいように床から30cm程度の低い位置と、アイロン台の高さに合わせた100cm程度の高い位置にあると便利です。
どこに何を置くか、どんな作業をするかを具体的にイメージしながら位置を決めることが、使い勝手を良くするコツです。
着替えはどこでする?プライバシーの確保方法
ファミリークローゼット内で着替えまで完結できると動線はスムーズですが、家族がいる時間帯はプライバシーが気になります。
対策としては、いくつかの方法が考えられます。
一つは、クローゼット内に着替え専用のスペースを設けることです。
4畳以上の広さがあれば、カーテンやロールスクリーンで仕切れる1畳ほどのスペースを確保し、姿見を設置すると快適な着替えコーナーになります。
もう一つの方法は、隣接する空間を活用することです。
例えば、洗面脱衣所と隣接させておけば、入浴後の着替えもスムーズですし、鍵もかけられます。
個室ではないため完全なプライベート空間にはなりませんが、簡単な間仕切りがあるだけで安心感は大きく変わります。
広島で家事動線の良い家を建てるなら山根木材へ
この記事でご紹介したような、家事効率を劇的にアップさせるファミリークローゼットのある間取りは、注文住宅だからこそ実現できる暮らしの工夫です。
自分たちのライフスタイルに最適な間取りや広さ、収納計画を考えるのは楽しい作業ですが、専門的な知識も必要になります。
後悔のない家づくりのためには、経験豊富なプロの視点を取り入れることが成功への近道です。
広島・東広島・福山エリアで注文住宅をご検討なら、ぜひ私たち山根木材にご相談ください。 山根木材では、ファミリークローゼットを中心とし、家事を楽にする動線設計「Kajitan」をご提案しています。これは、長年の経験と実績から生まれた、家族の時間を効率化して豊かな暮らしを実現する住まいのスタイルです。
手がけた注文住宅は累積1万棟以上。お客様一人ひとりの暮らしに寄り添い、最適なプランをご提案します。家づくりに関するご相談は、下記お問合せフォームからお気軽にご連絡ください。










