吹き抜けとは?メリット・デメリットや 注文住宅の建築事例も紹介

  • 作成日:2024/01/17
  • 更新日:2024/09/11
  • 編集者:山根木材メディア編集部
吹き抜けとは?メリット・デメリットや 注文住宅の建築事例も紹介

注文住宅を建てるなら、誰しも開放感があり明るくおしゃれな家に暮らしたいと憧れるもの。
そんな暮らしを叶えてくれる間取りアイデアの1つが「吹き抜け」です。
吹き抜けを家族が過ごすリビングに設置すれば快適に過ごせるうえ、デザイン性の高い空間に仕上がります。
デメリットがあることも事実ですが、設計時点で対策すれば解消できることも多くあります。

この記事では、開放感のある住まいを手に入れたい人向けに、吹き抜けの魅力をはじめ、メリットやデメリット、吹き抜けのある注文住宅の施工事例も紹介します。
この記事を読むことで、自分たちのライフスタイルに吹き抜けが合っているのかどうか判断できるので、ぜひ最後までご覧ください。

吹き抜けとは?

明るいリビングダイニングで団らんする家族

吹き抜けとは、下階の天井と上階の床板を設けずに上下階をつないだ空間のことです。
玄関ホールやリビングに採用されるケースが多く見られ、1階の天井がなくなることで空間が縦に広がり、視線が抜けて視覚的な広さを感じやすくなります。
また、3階建て住宅で1階から3階までの吹き抜けを採用すると、建坪が小さくても圧倒的な開放感を得られます。

具体的な数字で表すと、一般的な天井高は約2.2~2.5mですが、吹き抜けにすると天井高はその倍の5~6mほどです。
吹き抜けの広さは4畳半や6畳くらいの規模が一般的ですが、間取りや要望、敷地条件に合わせてサイズの調整ができます。

吹き抜けのメリット

開放的なキッチンで料理をする夫婦

住まいに吹き抜けを取り入れると、視覚的な開放感だけでなく生活利便性も向上します。
主なメリットを5つピックアップして解説します。

開放感のある空間になる

天井が高く縦に伸びる空間は、開放感を得られます。吹き抜けを設置して1階部分の天井がなくなれば、圧迫感が薄れて実際の面積以上に広さを感じやすいでしょう。
どのようなタイプの住宅でも吹き抜けの設置によって開放感は向上しますが、特に効果的なのは狭小住宅のように床面積が限られている住まいです。
横に空間を広げられなくても縦に伸ばせるのであれば、狭小住宅ならではの圧迫感をカバーできます。

吹き抜けの設置場所に迷う場合は、リビングなど人が多く集まる場所への採用がおすすめです。
吹き抜けによって快適性が高まれば自然と家族が集まりやすくなり、家族団らんの時間も増えるでしょう。

家族の気配を感じやすくなる

吹き抜けでリビングと上階をつなげれば、遮るものが少なくなる分だけ2階で過ごす家族の気配を感じやすくなります。
2階の居室にいる子どもに声をかけやすかったり、子どもも1階にいる親の気配を感じやすくなったりするなど、円滑なコミュニケーションができる住まいを実現できます。

子どもは成長するにつれて自分の時間を大事にするようになり、自室にこもりがちです。
しかし縦の空間でつながる吹き抜けがあれば、子どものプライバシーを尊重しつつ、適度な距離感でコミュニケーションが取れます。

自然光を1階まで取り入れられる

吹き抜け部分に窓を設置すると、高い位置から1階まで自然光が届きやすくなります。
吹き抜けに設置する窓は主に以下の2種類です。

  • 天窓(トップライト):屋根に設置する窓
  • 高窓(ハイサイドライト):天井に近い壁面に設置する窓

天窓(トップライト)は真上から、高窓(ハイサイドライト)は斜めから光が入り込む特徴があり、それぞれ家の中を明るくしたり、風通しがよくなったりする効果を期待できます。
ただし天窓は直射日光が入るため、季節によっては暑く感じるかもしれません。

天窓や高窓の設置は、住宅密集地ほど有効です。「周辺の建物で採光が難しい」「外からの視線が気になって大きな窓を設置しにくい」などのケースでは、吹き抜け付近に窓を設置することでそれらを解消できます。

プライバシーを確保しながら採光するなら、高窓がおすすめです。
高窓の設置する場所によっては空が窓越しに見えて、室内の開放感も生み出すことができます。
自然光によって明るい空間になれば、日中に電気を点ける必要もありません。

空気の流れ道が生まれ、風通しのいい家になる

吹き抜けに窓を設置すると、1階から取り入れた風が吹き抜け窓から抜ける流れ道が自然と生まれ、風通しが良くなります。

自然換気によって風の通り道を生み出すには、窓を2カ所開けて風の入口と出口を作ることが基本です。特に離れた対角の窓を開けると、換気効率が高まります。
新鮮な空気を取り込みやすくなり、部屋の空気がきれいになったり、部屋の温度や湿度を調整して結露防止に役立ったりするなどの効果も期待できます。

また吹き抜けに窓を設置すると、空気の性質を活かした換気が可能です。
空気は暖かいと軽く、冷たいと重いという性質があります。
この性質を活かして吹き抜けと1階部分の窓が対角線上になるように設計すると、より効率性の高い空気の入れ替えができます。

空間のデザイン性が高まる

吹き抜けを作ることで、空間設計のバリエーションが幅広くなります。
住まいのデザイン性を高められるので、理想とする形がある人にとっては見逃せないメリットです。
例えばリビングに吹き抜けによって生まれた大空間は、アイデア次第でデザイン性が大きく向上します。

特に梁をむき出しにする「見せ梁」は、吹き抜け空間のアクセントとなり、人気のあるデザインです。
通常は天井に隠れて見えない梁をあえて見せることで、ダイナミックな印象に仕上がります。
照明選びもペンダントライトやスポットライト、ダウンライト、ブラケットライトなど自由度が高く、好みに合わせた空間デザインが可能です。

吹き抜けのデザイン性を更に高めるための勾配天井や照明については、こちらでまとめています。

吹き抜けのデメリット

メリットの多い吹き抜けですが、大空間が生まれることで生じるデメリットもあります。
暮らしてから後悔しないために、デメリットもしっかり確認しておきましょう。

2階の床面積が削られる

吹き抜けは2階の床を一部分少なくする構造なので、2階部分の居住スペースが削られてしまいます。
例えば床面積が限られている狭小住宅に、1階と2階にそれぞれトイレを設置したくても、吹き抜けを作ることで2階の床面積の確保が難しくなります。

狭小住宅のように狭さを感じやすい家ほど吹き抜けが有効とはいえ、床面積とのバランスを考慮しないと住んでから暮らしにくさを感じるでしょう。
ただし吹き抜けの部分を塞いで床を作ったり、部屋や納戸に変更したりするリフォームは可能です。
将来のライフスタイルで悩んでいる人は、設計時点で施工会社に相談をしながら進めましょう。

音やニオイが広がる

吹き抜けによって空間がつながると、音やニオイが広がりやすい点も注意が必要です。

吹き抜けは壁が少ない分、室内に音が響きやすくなります。
間取りによっては、1階で見ているテレビの音や話し声、キッチンの水の音などが2階まで聞こえてくるかもしれません。
1階にいても吹き抜けがあることで音が反響しやすいため、音が聞こえにくくなってテレビの音量を上げてしまうことも1つの要因といえます。

また調理中のニオイが吹き抜けを通じて、2階に充満することもあります。
焼き肉や焼き魚などニオイの強い料理が好きなご家庭は、換気対策も万全に行いましょう。
キッチンに換気用の小窓、吹き抜けに窓を設置するだけでも有効な対策です。

快適さを追求した結果、家族の満足度が下がってしまっては本末転倒といえます。
デメリットは計画段階で十分に検討し、できるだけ対策を練りましょう。

冷暖房効率が下がる

大空間となる吹き抜けは冷暖房効率が下がり、光熱費が高くなる原因となります。
空気は暖まると上昇し、冷やされると下降する性質があり、例えば1階フロアで暖房をつけても吹き抜けを通じて上昇します。
そのため冬の1階フロアは暖まりにくく、足元が冷えやすいと感じる人は少なくありません。

逆に夏は、2階が涼しくならないと悩みがちです。2階でエアコンをつけても冷たい空気が吹き抜けを通して1階に流れるため、なかなか快適な温度になりません。
しかも吹き抜けに設置した窓から直射日光が降り注ぎ、2階は暑くなる傾向にあります。

その結果、エアコンの稼働量が増えてしまい、電気代は高くなるでしょう。
また、吹き抜け窓から空気が出入りすることで、夏は暑く冬は寒い住宅になる恐れもあります。
対策としてはシーリングファンの設置が有効ですが、予算に余裕があれば高断熱・高気密の家づくりを検討しましょう。

高所のメンテナンスが大変

吹き抜けがあると天井が高くなるため、高所のメンテナンスが大変な点もデメリットです。
天窓や高窓、シーリングファンや照明についたホコリの掃除、照明の電球交換が主なメンテナンスとなりますが、手が届きにくい場所にあるため転倒リスクに注意しなければなりません。

背伸びをしたり脚立に上がったりする行為は、若いうちは問題なくても、高齢になるにつれて難しくなり、億劫に感じる人もいるでしょう。
安全を確保しづらい場合は、業者に高所のメンテナンスを頼むことも検討しておきましょう。
業者に依頼すると費用はかかるものの、ケガをするリスクを考えるとプロに任せた方が安心です。

耐震性に不安が残る

吹き抜けを作ると、耐震面では不利になります。大きな吹き抜けほど、耐震の強度が下がりやすくなるでしょう。

地震によって生じるねじれの力は柱や壁の水平方向と、屋根や床といった垂直方向の2つで受け止めています。
箱のような形で強度を保っていると、想像すると分かりやすいかもしれません。
しかし床のない吹き抜けがあると両者のバランスが不安定になりやすく、大きな吹き抜けになればなるほどその強度が保たれにくくなります。

地震の多い日本で家づくりをする際は、耐震性にも注目してみましょう。
その指標として「建物の耐震等級」をチェックしてみると良いかもしれません。
耐震等級とは地震に対する建物の強さを表す指標で、3段階に分けられており数字が大きいほど耐震性能が高いことを意味しています。

耐震等級は鉄骨造、鉄筋コンクリート造だから高いというわけではなく、最近は木造住宅でも耐震等級3の家づくりが可能となりました。
ひと昔前に比べて選択肢が広がっているため、家のデザイン性以上に家の耐震性も重視してハウスメーカーや施工会社を選びましょう。

耐震等級3のメリット・デメリットについては、こちらの記事をご覧ください。

後悔しない!吹き抜けを作る前に考えたいこと

3人が打ち合わせしている手元

吹き抜けのデメリットを考えると、「やっぱり止めようかな…」と躊躇する人もいるかもしれません。
ここでは、吹き抜けのデメリットを解消しつつ、後悔しないために設計時に考えておきたいポイントを解説します。

空調設備

デメリットの章でお伝えしたように、吹き抜けは冷暖房効率が下がることで後悔するケースが少なくありません。
最近は全館空調を取り入れる家庭も多くなりましたが、全館空調は初期導入費用が高くなりやすいデメリットがあります。
一般的なエアコンで空調設備を整えたいなら、高気密・高断熱の家づくりが必須です。
できれば断熱等性能等級が高いZEH住宅での建築を検討しましょう。

ZEH(ゼッチ)とは、「net Zero EnergyHouse(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略語です。
ZEH住宅とは、断熱性能や設備機器の効率化を図り、消費するエネルギーを実質的にゼロ以下に抑える家を指します。

ZEHに求められる断熱性能等級は、高品質な断熱材や窓ガラスを用いる「断熱等級5」となっており、外気の影響を受けにくい高気密・高断熱の家づくりが実現できます。

冷暖房の光熱費を節約できるメリットもあるため、吹き抜けのある家との相性は抜群です。
ただし、建築費用がかさむ点はデメリットです。
ZEHが標準仕様の施工会社であれば別途料金が必要ないため、施工会社を選ぶ際の基準として押さえておきましょう。

ZEH住宅のメリット・デメリットについては、こちらの記事をご覧ください。

安全対策

高所のメンテナンスの難しさを解消するために、吹き抜けの一部にキャットウォークを取り入れる家庭が増えています。

キャットウォークとは、高い場所に設置した細い通路のことです。
その名前から猫が歩くものと考えられがちですが、猫だけのためのものではなく、高い所の作業用足場や通路として活用されています。

戸建てにおける一般的なキャットウォークは15~20cm程度の幅ですが、吹き抜けのメンテナンス作業として取り入れる場合は60cmほどの幅を確保するとよいでしょう。
素材は木材、アルミなど軽くて丈夫なものが一般的で、人が乗っても大丈夫なつくりにする必要があります。
転落防止のために、手すりを設置するのもおすすめです。

またデザイン性を高めるために、吹き抜け+オープン階段を採用する場合も安全対策が欠かせません。
オープン階段とは、片側が壁、片側がリビングに対して吹き抜けている階段のことです。スタイリッシュな印象になるものの、小さいお子さんが隙間から落下する可能性もあるので、ネットやパネルなどを取り付けるなどの安全対策を検討しましょう。

吹き抜けの設置場所

リビングを正面から見た様子

吹き抜けの設置場所は、リビング・階段・玄関など複数の選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
実際の暮らしをイメージしながら、どこに設置するべきか考えてみましょう。

リビング

リビングと吹き抜けの組み合わせは人気があり、多くの注文住宅に採用されています。
その理由は、開放感があり快適な空間になることです。快適で居心地のよいリビングには家族が集まりやすく、コミュニケーションも活発になりやすいでしょう。

ちなみに吹き抜けは、寝室や書斎など落ち着きたい部屋に向いていません。
食事を楽しむダイニング上部の吹き抜けも人によっては、落ち着かないと感じるケースがあるようです。

リビングに吹き抜けを作ると生活音はどうしても響きやすいので、部屋の配置や音漏れの対策は入念に検討しましょう。

階段

リビング階段と組み合わせて吹き抜けを設ける間取りも人気があります。
見た目のおしゃれさに加え、奥行きと縦の広がりが生まれて実際の面積以上の広さを感じられます。
空間が広く感じるため、狭小住宅のように床面積が限られている住宅にも適しています。

またリビング階段を階段の骨組と踏み板のみで構成された「スケルトン階段」にすれば、吹き抜け窓から取り入れた日差しがより1階フロアに届きやすくなります。
より明るく開放的な住まいになるでしょう。

玄関

玄関に吹き抜けを作ると開放感があり、デザイン性の高い住宅になります。
外観は狭小住宅に見える住まいでも、玄関に入った途端に大空間が広がっていればギャップが生まれ、家全体が広い印象になるでしょう。

ただし、玄関は外気が出入りしやすい場所ですから、冷たい空気や暖かい空気が吹き抜けを通して他の居住スペースに流れやすいデメリットがあります。
玄関に吹き抜けを設置する場合には、特に高気密・高断熱の施工を得意とする施工会社を選びましょう。

吹き抜けの建築費用

水色の背景に家の模型が3つ並ぶ写真

吹き抜けのメリット・デメリットを押さえたところで、気になるのが吹き抜けの建築費用です。
吹き抜けを作ると2階部分の床がなくなるため、建築費用が抑えられると思う人も多いでしょう。

しかし、吹き抜け周辺に手すりや腰壁を作る必要があり、工事の難易度も上がります。
特に2階の床がない分、構造を安定させる必要があるので、建築費用は逆に増えると考えておきましょう。

建築費用は吹き抜けの大きさによっても変わり、およそ100~200万円が相場です。
ただし施工会社によって、吹き抜けを作っても建築費用が変わらないケースもあるので、事前に確認しておきましょう。

吹き抜けのある住宅の建築事例

最後に、山根木材が手掛けた吹き抜けのある住まいの建築事例を紹介します。

家族が集うリビングに光を当てる吹き抜けのある住まい

リビングの一角に吹き抜けを設け、明るく開放的な空間を実現した間取りです。
吹き抜けの上部に設置した高窓とシーリングファンにより、採光と換気性能が高まっています。
ナチュラルカラーを基調とした屋内に自然光が降り注ぐことで、落ち着いた印象が感じられる空間に仕上がりました。
リビング階段を設け、階段下は子どもの秘密基地としても活用できます。

吹き抜け+スケルトン階段でより開放感な住まい

リビング全体を吹き抜けにして大空間を生み出した住まいです。
壁紙を白色にしたことで、大開口窓と吹き抜けの高窓から入り込む自然光が反射して明るい室内になりました。
見せ梁がアクセントになってデザイン性が高まっているうえ、2階の手すりをスケルトンにしたことで、より開放的な空間に仕上がりました。

丸太梁とキャットウォークが引き立つ吹き抜けのある住まい

吹き抜けに設置した、存在感のある丸太梁が目を引く住まいです。
天井はクロスではなく板張りにしているため、丸太梁と相まって木のぬくもりが引き立つ住まいになりました。
吹き抜け部分の高窓は、リビングの掃き出し窓と同じ大きさにしたことで、十分な明るさを確保できています。
さらにキャットウォークを設置し、高所のメンテナンスにかかる負担も軽減できます。

吹き抜けを作るなら高気密・高断熱の家づくりを!

明るいリビングダイニングでくつろぐ夫婦の写真2枚

吹き抜けを作ると開放感あふれる住まいになり、快適な暮らしを実現できます。
とはいえデメリットも少なからずあるため、家づくりの段階で対策が必要です。

ポイントを押さえた適切な対策により、暮らしやすさがグンとアップします。
特に吹き抜けのある家は冷暖房効率が下がりやすいので、高気密・高断熱の家づくりも検討しましょう。

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この記事を書いた人
yamane_mktg
山根木材メディア編集部

ヤマネホールディングス株式会社マーケティング課が、住まいの検討やより良い暮らしに向けたお役立ち情報などを発信しています。

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