テラスのある家では、休日に家族で食事をしたり、ガーデニングを楽しんだりと、生活をより豊かなものにできます。
リビングから続く開放的な空間や、庭の自然を感じながら過ごす時間は、戸建て住宅ならではの特権と言えるでしょう。
しかし、憧れだけで設置してしまうと「意外と使わない」「掃除が大変」「外からの視線が気になる」といった後悔につながることも少なくありません。
また、似たような空間である「中庭」との違いをよく理解せずに計画を進めてしまうケースも見受けられます。
この記事では、テラスのある家のメリットとデメリットを整理し、よくある失敗を防ぐための具体的な対策や、中庭との違いについて詳しく解説します。
テラスと中庭の違いと建築的な定義

家づくりを計画する際、「テラス」と「中庭」の違いが曖昧なまま検討が進むことがよくあります。
まずはそれぞれの建築的な定義と特徴を理解し、自分たちのライフスタイルにはどちらが適しているかを判断しましょう。
建物から庭へ張り出したスペースがテラス
一般的に「テラス」とは、建物の掃き出し窓などから庭に向かって張り出すように設置された、地面より一段高いスペースのことを指します。
主な特徴は、建物の外側に開放的に作られる点です。
リビングの延長として庭とのつながりを重視する場合に採用され、日当たりや風通しが良いのがメリットです。
一方で、道路や隣家からの視線にさらされやすいため、プライベート感を確保するにはフェンスなどの工夫が必要になります。
素材にはタイル、コンクリート、木材(ウッドデッキ)などが使われますが、基礎部分は地面に接しており、土台がしっかりしているのが特徴です。
建物や壁で囲まれたプライベート空間が中庭
「テラス」とよく比較される「中庭」は、建物や壁で囲まれたプライベートな屋外空間を指します。
建築的には、建物を上から見たときに「ロの字型」や「コの字型」に配置し、その内側に庭を作るスタイルが一般的です。
中庭の最大のメリットは、外部からの視線を完全に遮断できる点にあります。
カーテンを開け放していてもプライバシーが守られるため、お風呂上がりに涼んだり、パジャマ姿で子供を遊ばせたりといった使い方が可能です。
「プライベートテラスのある家」を希望する場合、単に庭にテラスを作るだけでなく、このように建物の形状を工夫して中庭的な要素を取り入れることも一つの選択肢となります。
ウッドデッキやインナーテラスとの区別
テラスと混同しやすい言葉に、バルコニー、ベランダ、インナーテラスなどがあります。
それぞれの違いを整理しました。
- ウッドデッキ:「テラス」の一種ですが、素材が木製(天然木や人工木)である場合を指します。
テラスと言うと、一般的にはタイル貼りやコンクリート仕上げの洋風な土間スペースを指すことが多いです。 - バルコニー:主に2階以上に設置される、屋根のない屋外スペースです。
下の階の屋根部分を利用したものはルーフバルコニーと呼ばれます。 - ベランダ:2階以上に設置されることが多く、雨をしのぐための屋根があるスペースのことです。
- インナーテラス:家の中にありながら、屋外のような使い方ができる空間です。
屋根や壁があり、土間仕上げになっていることが多く、天候に左右されずに使えるのが特徴です。
テラスのある家のメリットとデメリット

テラスのある家には多くの魅力がありますが、同時に考慮すべきデメリットも存在します。
これらを事前に把握しておくことで、住み始めてからのギャップを減らすことができます。
リビングが広く見える開放感と採光
最大のメリットは、リビングの延長として空間を広く見せられることです。
リビングの掃き出し窓とテラスの床の高さをフラットに揃え(フラットサッシなどを利用)、同じような色味の床材を使用することで、視覚的にリビングが外まで続いているような錯覚を生み出します。
これにより、限られた面積のリビングでも、実際の畳数以上の開放感を得ることができます。
また、テラスの床が光を反射して室内に取り込むため、部屋全体が明るくなる効果も期待できます。
外部からの視線や防犯面のリスク
テラスは開放的である反面、プライバシーの確保が難しいというデメリットがあります。
道路に面している場合や、隣家の窓が近い場合、テラスでくつろいでいる姿が丸見えになってしまうことがあります。
その結果、せっかくテラスを作ったのに「視線が気になってカーテンが開けられない」「落ち着かないので使わなくなった」というケースは少なくありません。
また、テラスがあることで足場ができ、2階への侵入経路になりやすいなど、防犯面での配慮も必要になります。
掃除の手間や虫の発生リスク
屋外にあるテラスは、雨風や砂埃、落ち葉などに常にさらされています。
きれいな状態を保つためには、定期的な掃き掃除や水洗いが欠かせません。
特に白いタイルなどは泥汚れが目立ちやすいため、こまめなメンテナンスが必要です。
また、植栽を近くに配置した場合や、ウッドデッキの下などは湿気がこもりやすく、虫の隠れ家になることもあります。
「テラスのある家 デメリット」と検索する方の多くが、この維持管理の手間を懸念しています。
建築費用と固定資産税への影響
テラスを設置するには、当然ながら建築コストがかかります。
広さや素材にもよりますが、数十万円から百万円単位の費用が必要です。
さらに注意が必要なのが固定資産税です。
一般的な屋根のないテラスであれば課税対象にならないことが多いですが、「屋根があり、3方向以上が壁で囲まれている(外気分断性がある)」などの条件を満たすと、建物の一部とみなされ床面積に含まれる場合があります。
特にサンルームや、壁で囲まれたインナーテラスを作る場合は、毎年の税金にも影響することを理解しておきましょう。
テラスを作って後悔する理由と失敗回避策

「テラス 使わない」という検索キーワードがあるように、設置後に活用されなくなる事例があります。ここでは、後悔しないための具体的な対策を紹介します。
使用頻度が下がる原因は視線とメンテナンス
テラスが使われなくなる二大原因は、「人の目が気になって落ち着かないこと」と「掃除が面倒で汚れたまま放置されること」です。
当初は「ここで優雅に朝食を」とイメージしていても、道路を歩く人と目が合うような環境では、次第に足が遠のいてしまいます。
また、一度汚れが蓄積すると掃除のハードルが上がり、さらに使わなくなるという悪循環に陥ります。
これらを設計段階で解決しておくことが、長く愛用できるテラスにするための鍵です。
視線を遮る目隠しフェンスや植栽の配置
視線対策として最も有効なのが、目隠しフェンスや植栽の計画的な配置です。
テラス全体を囲う必要はありません。
椅子に座った時の目線の高さ(約1.1m〜1.5m)や、通りからの視線が通るラインだけをピンポイントで隠すだけでも、心理的な安心感は大きく変わります。
圧迫感を出したくない場合は、スリットの入ったフェンスや、常緑樹などの植栽を組み合わせるのがおすすめです。
「隠す」のではなく「見えにくくする」工夫を取り入れましょう。
夏の暑さと雨対策には屋根やシェードが必須
日本の夏の日差しは強烈なため、日除けがないテラスは夏場ほとんど使用できません。
「テラスでBBQや子供のプール遊びをしたい」と考えているなら、日陰を作るための設備は必須です。
後付けできるオーニングやシェード用のフックを外壁に設置しておくか、最初からテラス屋根(テラス囲い)を計画に盛り込みましょう。
屋根があれば、急な雨でも洗濯物が濡れずに済み、テラスの使用頻度が格段に上がります。
掃除を楽にする排水設備と水栓の位置
メンテナンスを楽にするためには、水で丸洗いできる環境を整えておくことが重要です。
まず、テラスの近くに必ず「立水栓(外水栓)」を設置しましょう。
ホースをつなげば、BBQ後の油汚れや子供が遊んだ後の泥汚れをすぐに洗い流せます。
また、テラスの床には適切な勾配(傾斜)をつけ、水はけを良くしておくことも忘れてはいけません。
排水溝が詰まると掃除が大変になるため、落ち葉などが取り除きやすい形状の排水設備を選んでおくことをおすすめします。
ライフスタイル別おすすめテラススタイルと事例

自分たちの生活スタイルに合ったテラスはどのようなものでしょうか。
代表的なスタイルを3つ紹介します。
BBQやプールに最適な広いタイルテラス
友人を招いてのBBQや、夏場のビニールプールを楽しみたいアクティブな家庭には、耐久性が高く手入れがしやすいタイルテラスがおすすめです。
火の粉が落ちても燃える心配がなく、油汚れもデッキブラシでゴシゴシ洗えます。
広さは、4人家族で食事をするなら最低でも4.5畳〜6畳程度あるとゆとりが持てます。
リビングの床と同じ高さでつなげれば、食材や飲み物の運搬もスムーズで、ホームパーティーに最適な空間になります。
天候に左右されない屋根付きインナーテラス
共働きで洗濯物を外に干しっぱなしにするのが不安な方や、花粉・PM2.5が気になる方には、屋根付きのインナーテラスが最適です。
サンルームのようにガラスで囲まれた空間にすれば、天候を気にせずランドリールームとして活用できます。
また、ペットの遊び場や、趣味の自転車のメンテナンススペースとしても重宝します。
完全に室内化することで、第二のリビングとして多目的に使えるのが魅力です。
完全プライベートなロの字型中庭テラス
「カーテンを開けたまま暮らしたい」「外からの視線を一切気にしたくない」という要望が強い場合は、ロの字型の中庭テラスを検討してみましょう。
建物の中心にテラスを配置することで、全ての部屋に光と風を届けながら、外からの視線は完全にシャットアウトできます。
空だけが見えるプライベートな空間は、露天風呂のような開放感を味わったり、夜にお酒を楽しんだりと、極上のリラックスタイムを提供してくれます。
テラスの床素材選びと設置費用相場

テラスの費用や使い勝手は、床の素材によって大きく異なります。
主な3つの素材について、特徴と費用相場を解説します。
高級感と耐久性が高いタイルデッキは15万円から
- 費用相場: 約15万円〜(施工費込み・広さによる)
- 特徴: 高級感があり、モダンな住宅によく合います。
耐久性が非常に高く、経年劣化が少ないのが最大のメリットです。
色や柄のバリエーションも豊富です。 - 注意点: 夏場は表面が高温になりやすく、冬は冷たくなります。
雨の日は滑りやすくなるため、屋外用の滑り止め加工が施されたタイルを選ぶ必要があります。
木の温もりがある人工木ウッドデッキは25万円から
- 費用相場: 約25万円〜(施工費込み・広さによる)
- 特徴: 木の温かみがあり、リビングのフローリングと馴染みやすい素材です。
近年主流の「人工木(樹脂木)」は、天然木のように腐ることがなく、塗装などのメンテナンスも不要です。 - 注意点: 天然木に比べると熱を持ちやすいため、真夏は素足で歩けないほど熱くなることがあります。
コストを抑える土間コンクリートは5万円から
- 費用相場: 約5万円〜(施工費込み・広さによる)
- 特徴: シンプルで無機質なデザインが魅力です。
費用を最も安く抑えることができ、強度も十分です。
掃除も高圧洗浄機などで手軽に行えます。 - 注意点: デザインが殺風景になりがちです。
また、経年変化でヒビ割れ(クラック)が入ることがあります。
目地を入れてデザイン性を高めるなどの工夫が一般的です。
快適なテラス生活を実現する設計チェックリスト
最後に、テラスのある家を建てる際に必ず確認しておきたい設計上のポイントをまとめました。
キッチンからアクセスしやすい家事動線
テラスで食事をする場合、キッチンとテラスが遠いと準備や片付けが億劫になります。
キッチンから直接テラスに出られる勝手口を設けるか、ダイニングの横にテラスを配置するなど、食と直結する動線を意識しましょう。
また、洗濯物干し場として使う場合も、洗濯機からの距離を短くすることが家事楽のポイントです。
夜間の利用を想定した照明と屋外コンセント
昼間だけでなく、夜のテラス活用も考えるなら照明計画が重要です。
足元を照らすフットライトや、壁面をおしゃれに照らすスポットライトがあれば、夜でも雰囲気の良いバーのような空間になります。
また、意外と忘れがちなのが屋外コンセントです。
ホットプレートでの調理、照明器具の追加、高圧洗浄機の使用、スマートフォンの充電など、電源が必要になる場面は多々あります。
使いやすい位置に防水コンセントを2口程度設置しておきましょう。
外壁保証に影響しない独立型テラス屋根の検討
後付けでテラス屋根を設置する場合、外壁にビス(ネジ)を打ち込んで固定する方法が一般的ですが、ハウスメーカーによっては外壁に穴を開けると建物の防水保証が切れてしまうことがあります。
これを避けるためには、建物の外壁に固定せず、地面に柱を立てて自立させる「独立型」のテラス屋根を選ぶ必要があります。
新築時にテラス屋根も一緒に計画する場合は、ハウスメーカーの保証規定を事前に確認し、トラブルにならない施工方法を選びましょう。
まとめ
テラスのある家は、リビングを広く見せ、日常に非日常的な楽しみをもたらしてくれる素晴らしい住まいです。
しかし、視線対策やメンテナンスを考慮せずに作ってしまうと、ただの「使わない空間」になってしまうリスクもあります。
- テラスと中庭の違い: 開放感重視ならテラス、プライバシー重視なら中庭。
- 失敗回避: 目隠しフェンスと屋根(日除け)、水栓の確保は必須。
- 素材選び: メンテナンス性と予算に合わせてタイル、人工木、コンクリートを選ぶ。
これらのポイントを押さえ、自分たちのライフスタイルに合った「後悔しないテラス」を実現してください。
理想のテラスは、家族の時間をより豊かで笑顔あふれるものにしてくれるはずです。
広島・東広島・福山で理想の注文住宅を建てたいなら、広島を中心に累積1万棟を超える注文住宅を手がけてきた山根木材にご相談ください。
私たちはお客様の住まいと暮らしに寄り添うライフパートナーとして、ご家族の思いに耳を傾け、ライフステージの変化も見据えた、お客様の暮らしに寄り添ったプランをご提案します。
お問い合わせ・資料請求は、下記お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。







