注文住宅を建てるなら、誰しも開放感があり明るくおしゃれな家に暮らしたいと憧れるものです。
そんな暮らしを叶えてくれる間取りの代表格が「吹き抜け」です。
しかし、その美しいデザインに惹かれる一方で、「吹き抜けは冬寒いって本当?」「光熱費が高くなるのでは…」「実際に住んでみて後悔しないかな?」といった不安を感じて、採用に踏み切れない方も多いのではないでしょうか。
確かに、吹き抜けにはデメリットがあることも事実です。
しかし、現代の家づくりでは、設計や設備の工夫によって、そのデメリットの多くが解消できることもまた事実です。
この記事では、吹き抜けの基本的な知識から、メリット・デメリット、そして後悔しないための具体的な対策や費用までを徹底解説します。
自分たちのライフスタイルに吹き抜けが本当に合っているのか、この記事を読んでじっくりと判断してください。
吹き抜けの定義と高天井・勾配天井との構造的な違い

「吹き抜け」という言葉はよく耳にしますが、似たような言葉である「高天井」や「勾配天井」と何が違うのか、正確に理解している方は少ないかもしれません。
まずは、それぞれの定義と構造的な違いを明確にしましょう。
複数階をまたいで縦に空間をつなぐ建築構造
吹き抜けとは、一言で言えば「本来あるはずの上階の床を設けず、下階と上階をひとつの空間としてつなげた構造」のことを指します。
一般的には、1階の天井と2階の床を取り払い、1階から2階の天井までが連続した大空間になっている状態です。
通常の天井高が約2.4mから2.5mであるのに対し、吹き抜けにするとその高さは5mから6m近くにも及びます。
この圧倒的な高さが、通常の部屋では味わえない視覚的な広がりと開放感を生み出します。
リビングや玄関、階段スペースに設けられることが多く、家全体に一体感をもたらす効果があります。
天井高を上げるだけの高天井や屋根勾配利用との区別
吹き抜けとよく混同されるのが「高天井」や「勾配天井」です。
これらは似て非なるものであり、特徴やメリットも異なります。
まず「高天井」とは、その名の通り標準的な高さよりも天井を高く設定した部屋のことです。
たとえば、天井高を2.7mや3mに上げることで開放感を演出しますが、あくまで「1つの階層の中での話」であり、上階とつながっているわけではありません。
次に「勾配天井」は、屋根の傾斜(勾配)に合わせて天井を斜めに高くした構造です。
2階のリビングや平屋で採用されることが多く、屋根裏空間を有効活用して高さを出します。
これらに対して「吹き抜け」は、明確に「階層をまたいでいる」点が最大の特徴です。
2階の部屋や廊下から1階を見下ろせるような構造になっているかどうかが、見分けるポイントと言えるでしょう。
吹き抜けのある家のメリット・デメリットと後悔ポイント

吹き抜けを取り入れることで、暮らしはどのように変わるのでしょうか。
メリットだけでなく、住んでから気づきがちな「後悔ポイント(デメリット)」もしっかりと把握しておくことが大切です。
圧倒的な開放感と自然光を取り込む明るさの確保
最大のメリットは、何と言ってもその「開放感」と「明るさ」です。
視線が縦に抜けることで、実際の床面積以上に空間を広く感じることができます。
特に、都市部の住宅密集地や狭小地などで、隣家が迫っていて1階の日当たりが悪い場合でも、吹き抜けは絶大な効果を発揮します。
2階の高い位置に設けた「高窓(ハイサイドライト)」や、屋根に設けた「天窓(トップライト)」から自然光を取り込み、それを1階まで届けることができるからです。
日中は照明をつける必要がないほど明るく、空が見えることで精神的なゆとりも生まれます。
この「光の井戸」のような役割は、吹き抜けならではの大きな魅力です。
家族のコミュニケーション促進と上下階のつながり
吹き抜けは、家族の気配を感じられる家づくりにも貢献します。
1階のリビングと2階の子供部屋や廊下が空間としてつながっているため、どこにいてもお互いの存在を感じやすくなるのです。
たとえば、キッチンで料理をしている親が、2階で遊んでいる子供に声をかけたり、帰宅した家族の足音ですぐに気づけたりと、自然なコミュニケーションが生まれやすくなります。
子供が成長して部屋にこもりがちになる時期でも、完全に隔絶されることなく、程よい距離感でつながっていられる安心感は、子育て世代にとって大きなメリットと言えるでしょう。
冷暖房効率の悪化による冬の寒さと光熱費の上昇
一方で、最も多くの人が懸念し、実際に後悔につながりやすいデメリットが「寒さ」と「光熱費」の問題です。
「暖かい空気は上昇し、冷たい空気は下降する」という自然の摂理により、冬場はせっかく暖房で温めた空気が吹き抜けを通って2階へ逃げてしまい、代わりに冷たい空気が1階の足元に降りてきます。
かつての日本の住宅では断熱性能が不十分だったため、「吹き抜けは寒い」というのが定説でした。
暖房が効きにくいため設定温度を上げざるを得ず、結果として光熱費が高騰してしまうケースも少なくありませんでした。
夏場においても、大開口の窓から入る直射日光で室温が上がりすぎるリスクがあります。
テレビの音や料理の匂いが家中に広がる問題
空間がつながっていることは、裏を返せば「音」や「匂い」も筒抜けになるということです。
リビングで見ているテレビの音が2階の寝室まで響いて眠れなかったり、子供がはしゃぐ声が家中に響き渡ったりすることがあります。
また、受験生のいるご家庭では、生活音が勉強の妨げになることもあるでしょう。
匂いについても同様で、夕食のカレーや焼き魚の匂いが2階の居室や洗濯物まで広がってしまうことがあります。
プライバシーを重視したい方や、音に敏感な方にとっては、この「つながりすぎていること」がストレスになる可能性があるため、事前の対策が必要です。
高所の窓掃除や照明交換などメンテナンスの難しさ
住み始めてから「困った」と感じるのが、高い位置にある窓や照明のメンテナンスです。
吹き抜けの天井付近にある窓は、一般的な脚立では届かないことが多く、年末の大掃除で拭き掃除をしたくても自分ではできないケースがあります。
照明の電球が切れた際も同様で、交換のために専門業者を呼んで足場を組む必要が出てくれば、数万円単位の費用がかかってしまいます。
電動で昇降するタイプの照明を採用していれば問題ありませんが、固定式の照明やシーリングファンのお手入れには工夫が必要です。
これらの維持管理の手間とコストについては、設計段階で具体的にシミュレーションしておく必要があります。
快適に暮らすための寒さ・音・メンテナンス対策

これまで挙げたデメリットは、現代の建築技術と設計の工夫によって、そのほとんどを解消・軽減することが可能です。
ここでは、吹き抜けのある家で快適に暮らすための具体的な対策を紹介します。
高気密・高断熱住宅への性能向上と全館空調の検討
「吹き抜けは寒い」という常識は、過去のものです。
この問題を根本的に解決する鍵は、家の「気密性(C値)」と「断熱性(UA値)」を高めることにあります。
家全体を高性能な断熱材で魔法瓶のように包み込み、隙間を極限までなくすことで、外気の影響を受けにくくし、一度温めた空気を逃さない構造にします。
高気密・高断熱な住宅であれば、吹き抜けの大空間であってもわずかな冷暖房エネルギーで快適な室温を維持できます。
さらに、家中の温度を一定に保つ「全館空調システム」を導入すれば、部屋ごとの温度差がなくなり、ヒートショックのリスクも軽減できるため、吹き抜けとの相性は抜群です。
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準を満たすような高性能住宅を選ぶことが、失敗しないための第一歩です。
空気を循環させるシーリングファンと床暖房の併用
上下階の温度ムラを解消するための必須アイテムが、天井に取り付ける大きな扇風機のような「シーリングファン」です。
これをゆっくりと回転させることで、天井付近に溜まった暖かい空気を強制的に下に押し戻し、空気を攪拌(かくはん)します。
冬は上向きの風で空気を循環させ、夏は下向きの風で涼しさを感じさせるなど、季節に合わせて使い分けることで冷暖房効率が格段にアップします。
また、足元の寒さ対策として「床暖房」を併用するのも非常に効果的です。
床暖房はふく射熱で部屋全体をじんわりと温めるため、風を起こさず、足元からポカポカと快適な環境を作り出します。
高気密高断熱住宅+シーリングファン+床暖房の組み合わせなら、真冬でも吹き抜けリビングで快適に過ごせるでしょう。
断熱性を高める樹脂サッシやハニカムシェードの設置
窓は熱の出入りが最も大きい場所です。
吹き抜けの大開口窓には、熱伝導率の低い「樹脂サッシ」や、断熱性能の高い「Low-E複層ガラス(ペアガラスやトリプルガラス)」を採用することが不可欠です。
これにより、冬の冷気(コールドドラフト現象)や夏の熱気を大幅にカットできます。
さらに、窓辺の断熱性を高めるアイテムとして「ハニカムシェード」の設置もおすすめです。
ハニカム(蜂の巣)構造の空気層が断熱材のような役割を果たし、窓からの冷気や熱気を遮断してくれます。
電動タイプを選べば、高い位置の窓でもリモコン一つで開閉でき、日差しの調整も簡単に行えます。
昇降式照明やキャットウォーク設置による掃除動線確保
メンテナンスの難しさを解決するには、設計段階での計画が重要です。
照明器具には、リモコン操作で手元まで高さを下げられる「電動昇降機付きの照明」を採用するのが最も手軽な解決策です。
これなら、脚立を使わずに誰でも安全に電球交換や掃除ができます。
また、吹き抜けの一部に「キャットウォーク(空中廊下)」や「メンテナンス用ブリッジ」を設けるという方法もあります。
これはデザインのアクセントになるだけでなく、窓拭きやシーリングファンの掃除をするための足場として機能します。
猫を飼っているご家庭なら、猫の遊び場としても活用でき一石二鳥です。
窓についても、室内側から拭ける「内倒し窓」や「縦すべり出し窓」などを選ぶことで、専門業者に頼らずに掃除が可能になります。
吹き抜けと相性の良い場所やリビングの間取り実例

吹き抜けは、家のどこに配置するかでその効果や印象が大きく変わります。
ここでは、特に人気の高い設置場所と、それぞれの間取り実例におけるポイントを紹介します。
リビング階段と組み合わせた開放的なLDK空間
最も人気の高いスタイルが、リビングの吹き抜けに階段を配置するプランです。
特に、踏み板と骨組みだけで構成された「スケルトン階段」との相性は抜群です。
階段自体がインテリアの一部となり、窓からの光を遮ることなく部屋の奥まで届けます。
視線が上下だけでなく斜めにも抜けるため、20畳程度のLDKでもそれ以上の広がりを感じられます。
家族が必ずリビングを通って2階へ上がる動線になるため、自然と顔を合わせる機会が増え、コミュニケーション重視のご家庭に最適です。
玄関やホールを明るく広く見せる部分的な活用
リビング以外でおすすめなのが、玄関ホールへの採用です。
玄関は家の顔ですが、どうしても暗く狭くなりがちな場所でもあります。
ここに吹き抜けを設けることで、ドアを開けた瞬間に明るい光と開放感が広がり、来客に強烈なインパクトを与えることができます。
外観はコンパクトな家でも、中に入ると広々としているというギャップを演出できるのも魅力です。
ただし、玄関は外気の出入りが激しい場所なので、リビングなど他の居住スペースへの寒さの影響を考慮し、ドアや間仕切りで区画できるような工夫をしておくと安心です。
2階廊下やホールとつながるスキップフロアの構成
吹き抜けに面した2階のホールを、単なる通路にするのではなく、少し広めにとって「ファミリースペース」や「スタディコーナー」として活用する間取りも増えています。
1階のリビングを見下ろせるカウンターデスクを設置すれば、子供の勉強スペースや大人の書斎として使えます。
また、1.5階のような中二階(スキップフロア)を設けて吹き抜けとつなげる構成も魅力的です。
空間にリズムが生まれ、収納スペースを確保しながら開放感も維持できます。
完全に個室にこもるのではなく、家族の気配を感じながらそれぞれの時間を過ごせる、現代的な間取りと言えるでしょう。
吹き抜け設置にかかる費用相場と固定資産税の扱い

吹き抜けを採用する場合、気になるのがお金の話です。
建築費用は高くなるのか安くなるのか、そして入居後の税金はどうなるのか、具体的な相場観とルールを解説します。
坪単価計算における施工面積算出ルールと足場代
「2階の床がないのだから、材料費が減って安くなるのでは?」と考える方もいますが、実際には建築費用は少し高くなる傾向があります。
一般的に、吹き抜けを作るためのオプション費用として、1坪あたり数万円から、全体で100万円〜200万円程度の追加費用がかかるケースが多いです。
これは、耐震性を確保するために梁を太くしたり補強金具を追加したりする構造コストや、内装工事のために高い場所へ「内部足場」を組む費用が発生するためです。
また、ハウスメーカーによっては「施工面積」として吹き抜け部分も坪単価の計算に含める場合と、1/2で計算する場合などルールが異なります。
見積もりを取る際は、吹き抜け部分の計算方法を必ず確認しましょう。
床面積に含まれないことによる固定資産税評価への影響
一方で、金銭的なメリットとして見逃せないのが「固定資産税」への影響です。
固定資産税は、建物の「延べ床面積」を基準に評価額が算出されますが、吹き抜け部分は床がないため、原則として延べ床面積には含まれません。
つまり、同じ大きさの家を建てた場合、総2階建てで床がある家よりも、吹き抜けがある家の方が延べ床面積が小さくなり、その分だけ毎年の固定資産税が安くなる可能性があります。
数十年単位で払い続ける税金ですから、この節税効果は意外と大きなメリットと言えます。
ただし、自治体の評価基準や登記のルールによって細かな扱いは異なる場合があるため、詳細は確認が必要です。
導入で失敗しないための採用判断チェックリスト
最後に、これまでの情報を踏まえて、あなたの家づくりに吹き抜けが必要かどうかを判断するためのチェックリストを用意しました。
以下のポイントを確認しながら検討してみてください。
依頼するハウスメーカーの気密・断熱性能値の確認
最も重要なのは、家自体の基本性能です。
吹き抜けを採用するなら、依頼先の工務店やハウスメーカーが「高気密・高断熱」の施工を得意としているかを確認しましょう。
具体的には、断熱性能を示す「UA値」が0.6以下(できれば0.46以下のHEAT20 G2レベル)、気密性能を示す「C値」が1.0以下(できれば0.5以下)を目安にできるかどうかが分かれ目です。
この数値基準をクリアできる会社であれば、吹き抜けのデメリットである寒さはほぼ解消できると考えて良いでしょう。
将来的な部屋数の必要性とプライバシー確保のバランス
次に、ライフプランとの照らし合わせです。
「2階の床を抜いてまで開放感を得る価値があるか」を冷静に考えましょう。
もし、将来的に家族が増えて部屋数が足りなくなる可能性があるなら、吹き抜けよりも居室を優先すべきかもしれません。
また、音や匂いに敏感な家族がいる場合や、生活リズムがバラバラなご家庭の場合は、吹き抜けがストレスの原因になることもあります。
- 開放感や明るさ、家族のつながりを最優先したい人 → 吹き抜け向き
- 部屋数確保、プライバシー、個室での静けさを最優先したい人 → 吹き抜けは慎重に
この優先順位を家族でしっかりと話し合うことが、後悔しない選択につながります。
まとめ
吹き抜けは、単なる「穴」ではなく、住まいに光と風、そして家族のつながりをもたらす豊かな空間装置です。
かつて言われていた「寒さ」や「メンテナンス」の課題も、高気密・高断熱な家づくりや適切な設備の選定によって十分に解決できます。
大切なのは、メリットとデメリットを正しく理解し、自分たちの暮らしに合った対策を講じることです。
開放的で心地よいリビングでの暮らしをイメージしながら、ぜひ素敵な吹き抜けのある家づくりを実現してください。
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