「長年住んだ家を売却することになったけど、売れたお金がそのまま手に入るわけじゃないんだよな…」「税金や手数料で、思ったより手残りが少なくなったらどうしよう」
親から相続したご実家や、住み替えで売却するご自宅など、大切な不動産を手放すとき、このような不安を感じるのは当然のことです。
不動産売却では、売却価格から様々な「諸費用」と「税金」が差し引かれ、最終的に手元に残るお金が「手取り額」となります。
この手取り額を事前に把握し、合法的な方法で最大化することが、後悔しない不動産売却の鍵となります。
この記事では、不動産売却が初めての方でも安心して進められるよう、以下の点を分かりやすく解説します。
- 手取り額がわかる簡単シミュレーション
- 手取り額の具体的な計算方法
- 売却時にかかる費用と税金の全容
- 手取りを最大化するための節税対策
この記事を最後まで読めば、ご自身の不動産売却における手取り額の目安がわかり、どうすれば手元に一番多くお金を残せるかの具体的な道筋が見えるはずです。
まずは1分で確認!不動産売却手取り計算シミュレーション
複雑な計算は後回しにして、まずはあなたの不動産を売却した場合、手取り額がいくらくらいになるのか、おおよその金額を把握してみましょう。
以下のシミュレーターに簡単な情報を入力するだけで、概算の手取り額がわかります。
【不動産売却シミュレーター 入力項目】
- 希望売却価格:査定額や希望売却価格を入力
- 住宅ローン残債:銀行などから借り入れた住宅ローンの残高を入力
- 購入時物件価格:物件購入時の価格を入力
- 物件種別:戸建て・マンション・その他(土地など)から選択
【結果を表示する】ボタンをクリック
【シミュレーション結果の例】
- 手取り額:13,871,000円
- 売却金額:30,000,000円
- 住宅ローン残債:- 15,000,000円
- 仲介手数料:- 1,056,000円
(3000万円×3%+6万円)+消費税10% - 税金:- 0円(利益が出ていないため課税なし)
- 収入印紙代:- 10,000円
- 登記費用(抵当権抹消・住所移転など):- 30,000円
- 住宅ローン一括返済手数料:- 33,000円
いかがでしたか。あくまで概算ですが、大まかなイメージは掴めたのではないでしょうか。
次の章からは、このシミュレーション結果の内訳である「計算式」や「費用」「税金」について、一つひとつ詳しく見ていきましょう。
不動産売却手取りの計算式【売却価格-(費用+税金)】
不動産売却の手取り額は、非常にシンプルな式で表せます。
それは、「売却価格」から、売るためにかかった「諸費用」と、利益に対してかかる「税金」を差し引くというものです。
手取り額 = 売却価格 - (諸費用 + 税金)
この3つの要素さえ理解すれば、手取り額の計算は決して難しくありません。
- 売却価格 不動産が売れた金額そのものです。
- 諸費用 不動産会社に支払う仲介手数料や、契約書の印紙税など、売却手続きにかかる費用の合計です。
- 税金 不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に対してかかる所得税や住民税です。
次の章から、この「諸費用」と「税金」にどのようなものがあり、それぞれいくらかかるのかを具体的に解説していきます。
手取り額を減らす諸費用一覧とシミュレーション
不動産売却時には、必ず発生する費用と、物件の状況によって発生する費用があります。ここでは、主な諸費用とその相場について解説します。
仲介手数料
仲介手数料は、売却のサポートをしてくれた不動産会社に支払う成功報酬です。法律(宅地建物取引業法)で上限額が定められています。
- 売買価格200万円以下の部分 5% + 消費税
- 売買価格200万円超400万円以下の部分 4% + 消費税
- 売買価格400万円超の部分 3% + 消費税
計算が複雑なため、一般的に**「売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税」**という速算式が広く使われています。
例えば、家を3,000万円で売却した場合の仲介手数料の上限は、 (3,000万円 × 3% + 6万円) + 消費税10% = 105万6,000円 となります。
(参考:国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」)
印紙税
印紙税は、不動産売買契約書に貼る印紙代のことで、契約金額に応じて税額が決まります。2027年3月31日までは軽減措置が適用されます。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
1,000万円超 5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超 1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超 5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
(出典:国税庁 No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置)
登記費用
登記費用は、不動産の権利関係を公に示す「登記」手続きにかかる費用で、「登録免許税」という税金と、手続きを代行する「司法書士への報酬」で構成されます。
抵当権抹消登記
住宅ローンを利用して購入した不動産を売る場合、ローン完済後に金融機関の抵当権を抹消する登記が必要です。
登録免許税は不動産1個につき1,000円、司法書士報酬は1万5,000円~2万円程度が相場です。
所有権移転登記
買主へ所有権を移す登記です。この費用は買主が負担するのが一般的です。
ただし、登記簿上の住所が現在の住所と違う場合、その変更登記費用(1不動産あたり1,000円+司法書士報酬)が売主負担で必要になります。
その他費用(測量費・解体費)
物件の状況によっては、以下の費用が発生することがあります。
- 境界確定測量費 隣地との境界がはっきりしない土地を売る場合に必要です。
費用は土地の状況によりますが、30万円~80万円程度かかることがあります。 - 建物解体費 古い家が建っている土地を「更地(さらち)」として売る場合に必要です。
木造住宅の場合、1坪あたり4万円~6万円程度が解体費の目安です。
譲渡所得税・住民税の計算方法と税率
不動産売却で最も大きな金額になる可能性があるのが「税金」です。
これは「譲渡所得税・住民税」といい、不動産を売って得た利益(譲渡所得)に対して課税されます。利益が出なければ、この税金はかかりません。
課税対象額(課税譲渡所得)の算出
税金を計算する元となる「課税譲渡所得」は、以下の式で算出します。
課税譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除
この式を見るとわかるように、取得費や譲渡費用、特別控除の金額が大きくなるほど、課税対象額が減り、結果的に税金が安くなります。
売却額から差し引ける取得費と譲渡費用
取得費
取得費とは、売却した不動産を過去に購入したときの代金や建築費、購入時の仲介手数料などを合計した金額です。
建物の場合は、年数に応じた減価償却費を差し引いて計算します。
もし契約書などがなく購入代金がわからない場合は、「売却価格の5%」を概算取得費として計上することができます。
しかし、実際の購入額より大幅に低くなることが多いため、できる限り購入時の資料を探すことをお勧めします。
譲渡費用
譲渡費用とは、不動産を売るために直接かかった費用のことです。
具体的には、前章で解説した仲介手数料や印紙税、測量費などが該当します。
所有期間5年超で税率が下がる長期譲渡所得
算出した課税譲渡所得に、不動産の所有期間に応じた税率を掛けて最終的な税額が決まります。
ポイントは所有期間が5年を超えるかどうかです。
所有期間は、売却した年の1月1日時点で判断します。
所有期間 | 区分 | 税率(所得税+復興特別所得税+住民税) |
5年以下 | 短期譲渡所得 | 39.63% |
5年超 | 長期譲渡所得 | 20.315% |
手取りを最大化する税金対策!使える特例・控除制度6選
ここからが、手取りを最大化するための最も重要なポイントです。
不動産売却では、税金の負担を大きく軽減できる様々な特例や控除が用意されています。
ご自身の状況に合う制度を知り、賢く活用しましょう。
①マイホーム売却の3,000万円特別控除
ご自身が住んでいた家(マイホーム)を売却した場合に使える、最も強力な特例です。
課税譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。つまり、売却益が3,000万円以下であれば、譲渡所得税はかかりません。
(参考:国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例)
②10年超所有の軽減税率の特例
所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合、3,000万円控除を適用した後の課税譲渡所得のうち、6,000万円以下の部分の税率が14.21%に軽減されます。
3,000万円特別控除と併用できるのが大きなメリットです。
(参考:国税庁 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例)
③相続不動産の取得費加算の特例
親などから相続した不動産を、相続開始から3年10ヶ月以内に売却した場合、その不動産を相続するために支払った相続税の一部を取得費に加算できます。
取得費が増えるため、課税対象額を減らすことができます。
(参考:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)
④相続空き家の3,000万円特別控除
被相続人が一人で住んでいた家(空き家)を相続して売却した場合に、課税譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。
適用には「耐震基準を満たすためのリフォームをする」または「建物を解体して更地で売る」などの要件があります。
(参考:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)
⑤低未利用土地等の100万円特別控除
活用されていない土地(低未利用土地)を500万円以下で売却した場合などに、課税譲渡所得から最大100万円を控除できる制度です。
都市計画区域内にあることなど、細かい要件があります。
(参考:国税庁 No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除)
⑥特定の居住用財産の買換え特例
マイホームを売却し、新たにマイホームを購入(買い換え)する場合に使える制度です。
売却益への課税を、買い換えたマイホームを将来売却する時まで繰り延べることができます。
ただし、3,000万円特別控除や軽減税率の特例とは選択適用となり、併用はできません。
(参考:国税庁 No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例)
不動産の種類別!手取り計算の注意点
最後に、売却する不動産の種類(戸建て・土地・アパート)によって、特に注意すべき点を解説します。
戸建て・マンション売却の場合
ご自身が住んでいた戸建てやマンションの場合、ここまで解説した「3,000万円特別控除」や「10年超所有の軽減税率の特例」といった、マイホーム向けの強力な特例を最大限活用できるのが大きなポイントです。
建物の取得費を計算する際は、年数に応じた減価償却を忘れないようにしましょう。
土地売却の場合
土地を売却する場合、建物の減価償却がないため取得費の計算はシンプルです。
しかし、隣地との境界が曖昧な場合は境界確定測量が必要になり、予想外の費用がかかることがあります。
また、活用されていない土地であれば「低未利用土地等の100万円特別控除」が使えないか確認しましょう。
アパート・投資用不動産売却の場合
アパートや賃貸マンションなどの投資用不動産を売却する場合、マイホーム向けの特例(3,000万円特別控除など)は一切使えません。
そのため、税金の負担が大きくなる傾向にあります。日々の確定申告で計上した減価償却費を正確に把握し、取得費を計算することが非常に重要です。
まとめ
今回は、不動産売却の手取りを最大化するための計算方法や費用、税金、そして具体的な節税対策について解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントを振り返ります。
- 手取りの基本式:売却価格 - (諸費用 + 税金)の計算式を理解する。
- 諸費用:仲介手数料が最も大きい。相場を把握しておく。
- 税金:所有期間が5年を超えるかどうかで税率が大きく変わる。
- 最大化の鍵:ご自身の状況に合った特例・控除制度を漏れなく活用すること。
不動産売却の手取り計算や税金対策は複雑に感じるかもしれませんが、基本的な仕組みと活用できる制度を知っておくだけで、数百万円単位で手元に残るお金が変わることも珍しくありません。
この記事を参考に、まずはご自身の手取り額をシミュレーションし、どの特例が使えそうかを確認してみてください。そして、最終的な判断や手続きは、信頼できる不動産会社や税理士といった専門家と相談しながら進めることをお勧めします。
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